BLOG医院ブログ

2023.08.04

Lower Eyelid blepharoplasty
眼窩下孔を基準にした解剖学と手術への応用

今日もよろしくお願いします。   先日六本木でシースーを食べた帰りに酔っ払ってどうしても麺類が食べたくなり締めのつるとんたんに行ってしまいました。 器も雰囲気も非常におしゃれで、あまりにも美味しかったものでうどん2玉食べてしまいました。。 深夜の暴食ということで体重が心配ですが、あんまり記憶に残っていないのでほぼゼロカロリーと思っています。 皆様も締めに是非。   さて8月は1ヶ月間オキュロフェイシャルクリニック大阪院での勤務になります。 Ho-Seok Sa先生に続き、三村先生の元で新しい知見を学びたいと思います! 固定された環境で働いていると人間楽な方向へ逃げてしまいます。 自分の方法が合っているのかをアップデートする機会があることは非常に素晴らしいことです。 患者様のためオキュロのためより良い治療ができるように頑張ります!   火曜日 亀田総合病院 → 水曜日 大阪院 土曜日 大阪院 → 日曜日 千葉県旭市サンモール眼科クリニック の移動が6時間とめっちゃ長いですが、若いうちにしかできない経験なので楽しみたいと思います!   いよいよ本題です。 今日は下眼瞼眼瞼形成術(Lower Eyelid Blepharoplasty, 以下LEB)における眼窩下神経の解剖について、眼窩下孔を基準にして詳しく見ていきたいと思います。   眼窩下神経は三叉神経の第二枝であり、眼窩の底部にある上顎骨の眼窩下溝が眼窩底後縁から前内方へと伸び、そのまま眼窩下管となって眼窩下孔から皮下に出ます。 Plastic Surgery, Volume 2: Aesthetic Surgery, Fourth Editionより引用   IMAIOSより引用   LEB中には、当然ですが眼窩下神経を適切に識別し損傷を避けなければなりません。 この神経の損傷は、感覚異常や痛みを引き起こす可能性があります。 したがって、眼窩下孔とその周囲の構造を正確に理解し、手術中にその位置を確認することが重要です。   解剖上は 鹿嶋先生がUCLAのCadaver Dissection Courseで撮影した写真   Plastic Surgery, Volume 2: Aesthetic Surgery, Fourth Editionより引用   これを見ると思ったより上顎骨のrimに近いところに眼窩下神経はいます。 しかし肝心のrim付近にorbital retaining ligament, 以下ORLは存在します。解剖的にどう注意すればいいのでしょうか? 骨を見てみたいと思います。 この人は我が子のようにいつも触っているオキュロの頭蓋骨です。 頬部を見てほしいのですが、 赤で囲んだ部分って凹みになってます。その凹みの中に眼窩下孔がいてそこから眼窩下神経が主に下方に広がっています。   よって凹みの部分にエレバラスパで骨膜をガリガリこするようなことをすると眼窩下神経を損傷します。 この凹みの内側と外側は大事な構造はほぼないので骨膜上にエレバラスパを押し当ててしっかりORLを剥離しましょう。 ※特に内側のORLは再発しやすい場所なのでMCT付近までしっかりORLを剥離することが大事です。   そして凹みの部分は骨膜上を攻めずに、内側と外側にできたポケットを中空でつなぐようなイメージでポケットを作ると、比較的安全に広くfat padのtranspositioningできるかと思います。   このやり方で今のところ眼窩下神経損傷は起きていません。   しかし、これらの方法はあくまで経験と目安であり、個々の患者さんの解剖学的な違いを考慮に入れる必要があります。 加えて眼窩下神経が皮下にどのように広がるか正確な解剖はわかっていない部分も多く、あくまでも個人的な見解であるのはお伝えしておくべきかと思います。   眼窩下神経の解剖学的知識を深めそれを手術に適用することが、LEBの成功につながります。 今後も解剖学と臨床の接点について、さらに詳しく掘り下げていきたいと思います。 皆さんの臨床に役立つ情報を提供できることを願っています。次回もお楽しみに! 関連記事

2023.07.21

韓国の眼形成外科の最前線
– Asan Medical Centerでの一週間

今日もよろしくお願いします。   7/10-14まで韓国ソウルにあるAsan Medical Center(以下AMC)の眼形成研修を行ってきました。 ソウルは日本からの海外旅行先として非常に人気な国ですが、僕にとっては初めての渡航でした。 AMCにはHo-Seok Sa先生がいらっしゃいます。アカデミックで非常に高名な先生であり、見学実習の体験を共有したいと思います。 Find a doctoreng.amc.seoul.kr       7/9 ソウル金浦空港に到着しAMCへ向かいます。 AMCはソウルの郊外に位置しており、移動がやや大変です。 ソウル峨山病院 · 88 Olympic-ro 43-gil, Songpa-gu, Seoul, 韓国★★★★☆ · 大学病院goo.gl     病院にはresidentやfellowのためのドミトリーが併設されており、そこにcheck inします。 チョコンと置いてあるトイレットペーパーが印象的です。タオルとドライヤーを含めたアメニティは一切なかったですが、1泊1300円程度で滞在させて頂けたので文句は言えないです。この部屋で5泊しました。   7/10 研修初日です。毎週月曜日朝7時半から眼科全体でカンファレンスがあり、参加させて頂きました。 韓国語で多くは分からなかったですが、一週間の手術症例の共有と抄読会といった感じです。 そこで自己紹介をし、IDカードが支給されました。 AMCには沢山のInternational fellowが在籍しており、ガイドも充実していました。 下の写真が研修医室です。デスクを1つ与えて頂きました。 このナイスガイはフィリピンから1年間international fellowとしてきているJoseph Yap先生です。同じ年の31歳でした。   初日はSa先生の一日外来です。午前午後合わせて40-70人程度の外来があります。当然すべて眼形成・眼窩・涙道の患者様です。 韓国の方々ってものすごく丁寧で日本人と似ているなぁと思いました。 甲状腺眼症の活動期に対しては基本的にステロイド局所投与はせず、パルス+放射線療法の方針をとっているとのことでした。 ステロイド局所投与で眼圧上昇した症例が散見されたためそういう対応にしているそうです。 NLDOに関しては最初にLacrimal Duct Intubationを行い、駄目ならE-DCRを行っているようです。 下垂や内反などの手術適応はそこまでオキュロと大きく変わりないのかなと思いました。   初日の診療後に病院の18階にあるレストランで会食を設けて頂きました!   7/11 2日目です。火曜日はSa先生の外来・手術はなく、もう一人の眼形成の教授であるYang先生の手術見学をしました。 Find a doctoreng.amc.seoul.kr   眼瞼手術だけでなく、眼窩骨折の他院修正までされておりかなりレベルの高い手術をしていると思いました。 (骨折に関してはルーペでの手術のため、術野はほとんど見えなかったです。。。。。なぜ世界にmicroscope surgeryが普及しないのでしょうか……??オキュロのmicroscope surgeryの強みを改めて実感しました。)   この日の晩はJosephと飲みに行きました。   7/12 水曜日は一日中Sa先生の手術です。驚いたことは腫瘍がとにかく多い! 一日で眼窩腫瘍と脂腺癌再建と悪性黒色腫の再建と内下壁骨減圧が入っていました。   いくら総合病院だとしてもでもこれだけの症例が集まるのはすごいことだと思います。 Sa先生は腫瘍と骨折の手術が得意分野と仰っていました。 「鹿嶋先生がCosmetic Orbital Surgeryなら、私はCosmetic Cancer Surgeryだ。」と笑いながら話していました。 骨折整復は症例がなく、見られませんでしたが腫瘍再建は非常に手際がよく美しい手術だと思いました。手術時間は約1時間でした。   切除と再建は一期的に行っており、術中迅速診断で断端を確認します。 腫瘍再建は主にHughes flap techniqueを行っていました。 Sa先生曰く、特に上眼瞼の再建時にはanterior lamellarとposterior lamellarだけでなく、middle lamellarの再建が一番重要とのことです。本来middle lamellarという解剖構造はありませんが、上眼瞼の形状維持に非常に有用でありmarginal entropionに代表される術後合併症を大幅に予防できるとのことでした。   middle lamellarとして使用されているのはCG dermという素材です。 CGBIOという韓国のバイオテクノロジー企業が開発した製品で、無細胞同種真皮(Acellular Dermal Matrix)と呼ばれるものです。 これは人間の皮膚から細胞を取り除いて作られた生体材料で、主に乳房再建手術などの形成外科手術で使用されます。Sa先生が好んで使っているようです。       あとは骨減圧についてです。手術時間は両眼内下壁減圧で1.5時間程度でした。 ルーペ手術のため細かいところは見れませんでしたが、ポイントを聞いてきました。   内壁は蝶形骨洞が見えるまでとる。(写真撮れませんでしたが、実際にendoscopeで蝶形骨洞を見せてくれました。) ホルネル付着部位より前方の骨は眼球偏位の原因となるためとらない。 下壁は上顎洞背側壁まで取る。それより背側の下壁はとるメリットがない。 ノミでstrutもしっかり切除する。 メスでperiorbitaを切開し、副鼻腔へ眼窩脂肪を脱出させる。 終了時圧迫は必ずしも必要ない。   黄色い線で示されている場所が蝶形骨洞です。IMAIOSより引用   自分は骨減圧の経験がほとんどないため、非常に勉強になりました。 また、「骨減圧は術後に必ずCTを確認して、自分の手術でどこまで骨が取れているか必ずupdateしないといけないよ。」と教えてくれました。   表ハムラもやってました。 皮膚切除していましたが、やっていたのは脱脂でした。 オキュロみたいにOrbicularis Retaning Ligamentを外してfat transpositionまではやっていなかったです。 高齢の方はcanthopexyの併用していたのはオキュロと一緒でした。   この日の夜はYang先生とJosephとYeong A先生(domestic fellowの先生、おそらく同じ年くらい?)と会食でした。   7/13 木曜日は午前中は手術、午後は外来でした。 午前中の手術は生検がメインです。眼窩腫瘍が沢山です。   木曜日夕方にはpathologyとradiationについてのZoomカンファがありました。 病理医や放射線科医と話し合いが行われていましたが、韓国語なのでよくわからなかったです。笑   この日の晩はJosephと飲みました。 梨泰院です。 ソウルで一番高いロッテワールドタワーです。その高さは555メートルで、全123階建てとなっています。   7/14 金曜日は隔週で涙道の手術があるようですが、この週はなかったです。。。 Sa先生はこの日5つ会議があるとのことで自由時間だったため、昼からJosephと飲みました。   そして夜送別会を開いてくれました。 Sa先生から「これからも是非国際交流を続けていきましょう。academicでもclinicalでも眼形成を深めていってください。」と言っていただいて非常に励みになりました。   1週間は本当にあっという間でした。この経験は、私にとって非常に教育的かつ刺激的でした。 日本での診療に戻ってから、Asan Medical Centerで学んだ知識と技術を活用して患者さんのために最善を尽くすよう頑張ります! 今日もありがとうございました。 関連記事

2023.06.28

WSOPRAS in DubaiとAsia ITEDS in Singaporeを終えて

今日もお願いします。 5月は僕にとっては記念すべき月になりました。 海外学会で初めてオーラルでの発表ができました。小さな一歩ですが僕にとっては大きな一歩です。   「論文もちゃんと書けてないのに海外発表だけしても意味がない!」という意見もあると思います。 僕もそのとおりだと思います。エビデンスレベルでいくと海外発表と論文掲載には雲泥の差があります。 自分はまだまだ統計解析やデータ解釈、英語についての知識が全く足りてない常々思います。 そのことが不安で海外学会に足を踏み入れていいのだろうか…?? という不安も正直ありました。   結果から言うと僕の人生の中で最高の経験の1つになりました。 本当に嬉しいです。2月にマレーシア、5月にドバイでのポスター掲示が採択されましたが、ポスターだと忙しい先生方はなかなか見てくれません。オーラルは初めての経験でしたが、会場内のたくさんの先生が見てくれます。一部の先生は発表後に質問にまで来てくれます。普段自分でやっていることが世界的に認められるのはモチベーションも上がりますし、さらに成長しなければならないと強く自覚します。   思い出がたくさんできました。鹿嶋先生、患者様、助けてくれた先生方やスタッフの方々ありがとうございました。         さて本日のお題は甲状腺眼症に対する脂肪減圧 vs 骨減圧についてです。   この点についてはシンガポール学会でも論点になっていました。 骨減圧代表の中国のHonglei Liu先生と脂肪減圧代表の鹿嶋先生とで議論していたことが非常に記憶に残っています。   Liu先生は眼窩外壁をDuraが見えるギリギリまでMaximumに切除する骨減圧の極地とも言えるような発表をしていました。 対して鹿嶋先生は甲状腺眼症ってそもそも脂肪と筋肉の病気だから骨を削るよりも脂肪切除した方がいいんじゃない?(筋肉は切除できないので。。。)という意見でした。   こういう話っていうはなかなか結論が出ないです。 僕は自分が患者だったら、、、侵襲や合併症を鑑みて脂肪減圧を選ぶと思います。 しかしそれは僕の感想なのでどういう使い分けをしているのか、論文を元に見てみましょう。   韓国のJin Sook Yoon先生の研究室の論文です。 ちなみに上の集合写真の左下の先生です。見た目はすごく若いですが、教授で研究室も持っているとのことです。 Faculty dinnerではビールにチャミスルを混ぜて飲んでいたのがとても印象的でした。     甲状腺眼症の病態に応じて術式を分けましょうという趣旨の報告です。 まずは甲状腺眼症は大きく分けて2つのタイプがあります。   type I  →predominantly fat compartment enlargement type II →predominantly extraocular muscle enlargement   これらの2つのタイプに分かれ、オーバーラップしている場合も多々あり非常に病態が複雑です。 これらのタイプに応じて type Ⅰの場合は脂肪減圧メイン(不十分な場合は骨減圧併用) type Ⅱの場合は骨減圧メイン   という風に段階的に減圧術を行いましょうというものです。 2002年にUCSDのKikkawa先生が似たような趣旨の論文を出しています。   ちなみに患者内訳は以下のとおりです。 Fat-only decompression (group 1) fat and one-wall decompression (group 2) fat and two-wall decompression (group 3) two-wall decompression with minimal fat (<1 mL) (group 4)   Myopathy score 3 = primary diplopia or no orthotropia at the primary position 2 = orthotropia at the primary position, but with diplopia within 30° in BSV or more than 10° limitation in HESS 1 = diplopia only outside 30° in BSV 0 = no diplopia at any gaze   そして術後結果です。 どのGroupも減圧効果としては非常に良好かと思います! しかし骨減圧をすればするほど複視のリスクがどんどん上がることは無視できません…。。。   術後に複視が悪化した患者は8人(14.5%)で、8人のうち6人がgroup 3、1人がgroup 1、1人がgroup 2でした。 group 4は一見scoreの悪化がないように見えますが、そもそも術前から正面視での複視があり術後もそのままだったよ、という結果です。   またLiao先生やHuang先生による報告と同様に、切除した眼窩脂肪量に対する平均Hertel変化量の比は、約1であったと報告しています。つまり眼窩脂肪を1cc切除すると約1ml目が引っ込むよ、というのは共通理解になりつつあるのかな?と解釈しました。       脂肪減圧術は骨の除去を伴わないため、眼窩下神経知覚低下、脳脊髄液漏出、複視などの副作用の可能性は少なくとも理論的には最小限に抑えられます。しかし、国際的にはまだまだちょっと難しくて危険な手術じゃない??という印象だと思います。 今後も減圧術に関するデータを出して少しでも世界に脂肪減圧術の良さを伝えていければなと思っています。 今日もありがとうございました! 関連記事

2023.05.16

夏期休業のお知らせ

夏期休業のお知らせ 当院では、下記の日程にて休業を予定しております。 7月8日(土) 休診 7月9日(日) 休診 7月10日(月) 休診 7月11日(火) 休診 7月12日(水) 休診 7月13日(木) 休診 7月14日(金) 休診 7月15日(土) 休診 7月16日(日) 休診 7月17日(月) 休診 7月18日(火) 休診

2023.05.01

診療時間変更のお知らせ

当院は5月11(木)より、木曜日の診療を隔週から毎週診療へ変更いたします。 ご確認・ご了承のほどお願い申し上げます。

2023.04.29

甲状腺性視神経症について

今日もよろしくおねがいします。 忙しさにかまけてだいぶ投稿が久しぶりになりました。 亀田病院に長く通って頂いてる患者様からも「先生お忙しいせいか、ブログが3ヶ月更新されてませんね。」とご指摘を受けました。がんばります。   まずは近況の報告からです。 5年間お世話になった亀田総合病院眼科は今年度から非常勤体制となります。 月曜日午前 手術         午後 眼形成眼窩外科外来 火曜日午前 手術(主に後進育成) 午後 一般外来 水曜日 オキュロ東京院 前橋院 隔週で交互 木曜日 前橋院 金曜日 千葉院 土曜日 東京院 日曜日 千葉県旭市サンモール眼科クリニック 隔週   で診療、手術を行っております。   週に大体20人程度の患者様を手術させていただいております。 総執刀件数も2000件以上になってきましたがまだまだ学ぶことが多いと感じる日々です。 上達するほど上には上がいることを実感します。まだまだ眼形成学の山のてっぺんが見えません。 気が抜ける時もありますが緊張感をもって学び続けたいと思います。       さて本日は内下壁の骨減圧についてです。 当院では甲状腺眼症による眼球突出の治療としてほとんどの場合脂肪減圧が行われています。 しかし、甲状腺性視神経症 Dysthyroid optic neuropathy(以下DON)の場合は話が変わります。   DONは甲状腺眼症による合併症の中で最も恐ろしいもののひとつです。 発生率は甲状腺眼症患者全体の2〜9%(重症患者の最大50%)と言われています。 DONによる視力低下は、早急な対応が必要になります。   下記はEUGOGO2021に掲載されている重症度分類です。   病態としては炎症性や虚血性など様々なメカニズムが報告されています。現在最も広く受け入れられている説は、腫れた外眼筋と眼窩脂肪による視神経の直接的な機械的圧迫で、軸索の流れの減速と結果として生じる虚血が原因と言われています。   ちなみに腫れやすい筋肉は下直筋>内直筋>上直筋>外直筋 と下から内回りですので覚えておきましょう。 外眼筋の中で一番DONを起こしやすい筋肉は上直筋と言われています。 外眼筋腫脹を起こす病気はたくさんありますが甲状腺眼症の場合、外眼筋腱部ではなく筋腹部がメインで腫れます。 上直筋は筋腹部がより眼窩先端部に近いところにあるため視神経を圧迫しやすいようです。     CTの例は下記のとおりです。 Liu, Volpe, and Galetta’s Neuro-Ophthalmology, Third Edition より引用     DONに遭遇した場合どのような対処が必要なのでしょうか? 上図がDONの治療アルゴリズムです。基本的にはパルス療法から選択します。 最初から骨減圧をやらないの??とも思いますが、 小規模なRCTでは、第一選択治療として投与されたグルココルチコイドの静脈内投与と比較して、即時減圧の方がむしろ視力予後が悪いと報告されています。 DON患者24名(40眼)のレトロスペクティブ研究では、40%以上の患者がメチルプレドニゾロン大量静注療法後に視機能の永久的な回復が得られた報告されています。 よって当院ではまずはパルス療法+ステロイド局所投与を緊急で行い、それでも視力回復が得られない方に骨減圧を追加で行う方針としています。     甲状腺眼症は専門にしている医師が少なく、形成外科と眼科の狭間の疾患のためちゃんとした眼形成眼窩外科医が診るべきだと思います。一般眼科医だとしても、視神経症や斜視、角膜障害を伴う甲状腺眼症は必ず見落としてはいけないので覚えておきましょう。 骨減圧について書こうと思ったのですが、だいぶ内容が多くなってしまったので次回にしたいと思います。   今日もありがとうございました。今後ともよろしくおねがいします。 関連記事

2023.04.25

ゴールデンウィークの診療・休診について

ゴールデンウィークの診療・休診日について 当院では、下記の日程にて休業を予定しております。 4月29日(土・祝) 通常通り診療8:15〜17:15 4月30日(日) 休診 5月1日(月) 通常通り診療8:15〜17:15 5月2日(火) 休診 5月3日(水) 休診 5月4日(木) 休診 5月5日(金) 休診 5月6日(土) 休診 5月7日(日) 休診

2023.01.03

orbital adherence syndrome について

明けましておめでとうございます。今日もよろしくお願いいたします。   時間が経つのは早いものです。 亀田総合病院が12/29に仕事納めをしてもう既に1/3になってしまいました。 まだ「笑ってはいけない」シリーズが年末ではなく、特別企画でやられていた頃に「絶対に笑ってはいけない温泉宿in湯河原」という回がありました。その時に吉田照美さんが「光陰矢の如し、サーロイン肉の如し」と言っていたことが思い出されます。   さて、本日はorbital adherence syndrome(以下OAS)についてです。 なかなか聞き慣れない言葉かと思いますが、 この報告で初めて提唱された概念です。眼窩骨折へのチタンインプラント挿入によって周囲に線維芽細胞が増生し線維性被膜ができて、その被膜により強い癒着が起こり瘢痕性眼瞼後退や外眼筋の運動制限が起きるという病態です。近年何報か似たような報告がされています。     最近オキュロフェイシャルクリニック東京では、他院術後(眼窩骨折や裏ハムラ法など)の様々な眼窩内瘢痕の症例がいらっしゃいます。原因としてはチタンメッシュプレートが不適切な位置に挿入されたものが多くあります。   既報ではチタンメッシュプレートは有効で安全なものであると報告されていますが、他院術後の眼窩を手術でみてみるとプレート周囲が瘢痕でガチガチになっている状態がよく見受けられます。術中に眼窩内組織の不適切な処理を行うと眼窩内に癒着を引き起こすことは想像に難くないと思います。   正常であれば骨膜、Lockwood靭帯、眼窩脂肪が眼球、眼輪筋、眼窩骨の間に隙間なく埋まり介在することでスムーズな眼球運動が得られます。また、眼窩脂肪はKroonneefが提唱した概念によると 上記のようにそれぞれに細かく名前がついているわけではありませんが、眼窩脂肪全体は小さなコンパートメントに分けられます。これらも眼球の位置を安定させ、眼球をスムーズに回転させることを可能にさせます。       よってOASを予防するために ①眼窩脂肪を不用意に弄らず、余計な瘢痕を作らない。 ②骨膜や靭帯などは眼窩と眼窩外を隔てる大事な構造のため可能な限り温存する。 ③人工物(特にチタンメッシュプレート)は周囲に線維被膜を形成するため、眼窩内に留置せず必ず骨膜下に置く。   以上を心掛けたら良いと思います。今年もよろしくお願いします。ありがとうございました。 関連記事

2022.12.07

年始のお休みについて

当院では、下記の日程にて年始休業を予定しております。 2023年1月1日(日)〜2023年1月5日(木) 年明けは、2023年1月6日(金)より診療とさせていただきます。 ご不便をおかけして申し訳ございません。 みなさま、忙しい年末ですが、お体に気をつけてお過ごしください。 2022年12月31日(土) 休診日 2023年1月1日(日) 2023年1月2日(月) 2023年1月3日(火) 2023年1月4日(水) 2023年1月5日(木) 2023年1月6日(金) 通常通り8:15より診療開始

2022.12.02

裏ハムラ法 解剖に基づいて

今日もよろしくお願いします。   最近本格的に学会活動が増えてきました。 それに伴って医療統計・論文投稿って本当に難しい。。。と切に思います。 学会発表と論文投稿ってよく肩を並べられますが、エビデンスレベルといくと圧倒的に論文の方が上です。 学会発表だとdiscussionできるということは最大の利点ですが、単発的になりがちです。 国際的な知名度を考えると論文の方が大事です。論文投稿だとpubmedに名前が残ります。 医療統計とか研究デザインの仕方、倫理委員会などまだまだ学ぶことは山積みです。 臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意 (すべての臨床医に捧ぐ超現場重視型の臨床研究指南書) 参考書籍はこちら 少し古い本ですが、この本がとっつきやすくわかりやすいかと思います。 「学会や論文やんないとなぁぁ。でもよくわかんないしなぁぁ。」って思ってる方々にはよいかもしれません。     さて1年くらい前にも裏ハムラ法について述べましたが、また改めて紹介したいと思います。   1年たってみてもなかなか難しい上に修正も難しいです。💦 ASOPRSで思ったことのひとつですが、foreheadとmidfaceは独立した一つの分野なのではないかというくらい奥深いです。自分は涙道・眼瞼、眼窩の手術をやりますが、foreheadとmidfaceの手術はまだまだ発展途上です。   本日はmidfaceについて語ります。 下眼瞼の脂肪ヘルニア、いわゆるBaggy eyelidという状態では表情が疲れたように見え、年をとった外観の原因となります。   そもそも老化した顔つきってなぜ起きるのでしょうか? midfaceの加齢性の変化を見た時にまずは骨格は下図のように変化します。   図のようにmidfaceでは上顎骨が著しく後退します。 その結果軟部組織は支えを失い、たるんだような印象に見えます。   軟部組織は靭帯のある部分は骨に固定されており、ない部分は支えがなく垂れ下がります。 すると中顔面は3区画に分けることができます。     中顔面の軟部組織を回復し若返らせるためには、これらの老化の変化が起こっているレベルで直接外科的に対処することが論理的なアプローチとなります。つまり、骨に付着している軟部組織を外し、外した軟部組織をならす もしくは 切除することが必要です。 この図の青いエリアは剥離が容易ですが、裏を返すとこの青いエリアの間にある靭帯をしっかり外してあげないと病態は改善しないです。特に硬いのが内側のtear trough ligamentです。ここが一番溝が深くなる傾向にあるためしっかり外してあげます。外した靭帯の真下にorbital fatがあれば病態は再発することはないでしょう。   画像はPlastic Surgery: Principles and Practice, 65, 1016-1029 から引用です。   「靭帯を外すんですか!?怖い!!」という意見は当然です。報告を見てみましょう。 下記の論文では105症例、平均経過観察期間31ヶ月という期間で評価しています。   99%に下眼瞼下垂や外反などの合併症が起きなかったとのことです。 また、しわと隆起が軽減し笑顔が若返るという結果でした。 長期成績で見ても安全な手術と言っていいのではないでしょうか?   ちなみに一番むずかしいのがこういう瞼の人です。 男性に多いのですが、眼窩脂肪が突出が大きく外側まで弛んでいるのが特徴です。 この場合だと ①そもそも瞼が厚いためアプローチが大変。 ②脂肪を移動させるだけでなく一部切除しなければならない。特にlateral orbital fat。   こういう難しい人を言い訳せずにしっかり治せるのが名医だと思います。 今はまだ難しいですがしっかり治せるように頑張ります。 今日はここまでにします!ありがとうございました! 関連記事

診療時間
8:15〜17:15 - -

[休診日]月曜・日曜・祝日
※当院の診療は完全予約制になります。

診療日カレンダーを開く
アクセス
〒260-0015
千葉県千葉市中央区富士見1丁目1−13 JS Bldg 6階
  • JR千葉駅から徒歩6分
  • 京成千葉駅から徒歩6分
GoogleMapを開く
地図
インスタグラム 公式LINE