2023.11.24
第4回日本眼科AI学会総会に参加してみました
AI学会 in パシフィコ横浜ノースに参加
本日はAI学会 in パシフィコ横浜ノースに参加してきました。
僕のメンターの一人である加藤直子先生がシンポジウムで発表するとのことで
「新しいものに首を突っ込むのは大切です!」
とコメントを頂いたのできてみました。
ただ一言
難しいです!笑
眼形成分野の発表としては北口先生がスマホで顔写真を撮るだけで眼球突出度がわかる!?という面白すぎる発表をしていました。
まだまだ課題が多いですが、色んな分野の先生方がスマホ診断のことを発表していたので非常に面白かったです。
データサイエンスを学ぶ上でAI診療はもう切り離せないと実感しました。
新井紀子先生の発表について
そんな中で素人にもわかりやすく本当におもしろいと思ったのは新井紀子先生の発表です。
「AI vs.教科書が読めない子どもたち」という本の著者です。(これを機に買ってしまいました。)
話を完全に理解できたわけではありませんが、、、、
これからは専門性がなく、文脈などの意味を理解できない人はAIに取って代わられ易い時代が来ます。
AIが人間を超えるいわゆるシンギュラリティというのは、先生曰くAIが統計を駆使したコンピューターの演算ソフトである以上必ず起きないとのことです。最近の人間が苦手としている文脈や空気を読むや臨機応変に関してはAIも苦手としている分野で、そこを強みとしない限りAIに仕事を奪われかねます。しかし、専門家である以上はAIの嘘を見抜き利用することで自分を助けるツールとして利用することができるとのことでした。
もし自分が専門のない一般眼科医だといずれは取って代わられるかもしれませんが、オキュロの眼形成の専門家である以上はそれを利用することで眼形成におけるAI診療の手助けになれればいいなと思いました。
poorな内容ですが濃密な勤労感謝の日でした。またお願いします。
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2023.11.23
ASOPRSが終わりました!!
今日もよろしくお願いします。
10/6-9 日本臨床眼科学会(東京)
10/28 日本眼窩疾患シンポジウム(広島)
11/2-3 アメリカ眼形成再建外科学会 ASOPRS、11/4-7のアメリカ眼科学会 AAO(San Francisco)
に参加してきました。
臨眼、シンポジウム、ASOPRSはoral presentaitionでした。
AAOはcadaver dissectionコースを受講しました。
ナポリに引き続き、初めての経験が多く混乱することが多かったですが本当にいい経験ができました。
まず臨眼について
臨眼の中では眼形成・眼窩・涙道セッションはまだまだ小さいセッションです。
しかし、最近どんどん認知度が高まっているような印象があります。
普通の眼科医の先生方からはあまり興味はないかもしれませんが、眼形成・涙道は本当にcommon diseaseでものすごく患者層が広いです。1日一般外来をやると何十人も困っている人を見つけられます。今後どんどん大きくなっていけばいいなと思います。
インストラクションコースと一般演題で発表しました。
インストラクションコースでは鹿嶋先生、尾山先生、藤本先生、山中先生、山名先生と一緒にセッションができました。
インストラクションを担当するのは3,4回目ですが、この31歳の若造がほとんど年上の先生達に講釈を垂れるなんて本当に面白い話だと我ながら毎回思います。機会を頂いてありがとうございます。後輩達はいくらでも成長し続けますので今後も追い抜かされないように走り続けます。
一般演題は座長を大湊先生にやっていただき、オキュロの同じ若手である小滝先生、永岡先生と一緒に発表してきました。
鹿嶋先生が当日いないことが直前にわかったので、まさかの指導医として初参加でした。
「俺が指導医!?笑えるわ……。」
と臨みましたが、会場の先生方本当に優しい方々で怖い質問が全く来なかったので良かったです。
指導医ポジションは場のケツ持ちの役割です。
よって発表者よりも気を張って発表を聞かなければならないためより濃密な時間を過ごせました。
シンポジウムについて
今年でシンポジウムの出席は3回目です。
シンポジウムは主に聖隷浜松病院出身の先生方が多く出席する会です。
日本中の御高名な先生方と少しずつ親交を深められるのは非常に喜ばしいことです。
シンポジウムは臨眼よりは相当マニアックな会です。
毎回病理や病態について著名な先生方が語り合っているシーンは圧巻です。。。
自分はサージカルのことはある程度語れると自負しておりますが、病理や病態生理はまだまだ勉強不足であると実感します。
毎回参加してお叱りを受けながら少しずつお作法を教えて頂けたらと思います。
ちなみにシンポジウムでも指導医ポジションでの参加でした。
鹿嶋先生・三村先生を始め、オキュログループのトップの先生達が一人も参加されなかったので、永岡先生と手に汗握りながら発表してきました。会場にいた緒方先生がとても励みになったのを覚えています。
シンポジウムでもそこまで怖い質問は来ず、
発表に関して色々なアドバイスやヒントを頂けたので今後論文化するときに活かしていこうと思いました!
ASOPRS2回目の参加にして初めてoral presentation
ここからが本題です。
ASOPRS 2回目の参加にして初めてoral presentationをしてきました!!
日本人でおそらく6人目?の発表で、Aesthetics sessionでは日本人初の発表ができました。
今年はSan Franciscoでの開催です。San Franciscoはアメリカベストシティランキングでは第4位の都市で通称”Fog City”と呼ばれています。
アメリカで一番美しい橋と言われているゴールデンゲートブリッジがある、とても風光明媚な街です。
世界中色々な都市を巡ってきましたが、トップ5に入るかと思います。
最近では麻薬中毒者が溢れ、治安が悪いというニュースが目立ちますが全然怖い思いはせず安全に過ごせました。
ゴールデンゲートブリッジをはじめ、アルカトラズ島、アメリカ最大の中華街、日本街、ヨセミテ公園、ナパバレー、その他博物館、美術館など観光地が多いです。
観光の話はさておき、ASOPRSについてです。ASOPRSで毎回すごいなと思うことが、みんな秘蔵のビッグデータを持ってきて明日の診療からすぐ活かせるような情報がたくさんあります。
例えば
ptosisのない皮膚弛緩主体の下垂患者においては
眉毛-重瞼距離の長い人はBlepharoplasty
眉毛-重瞼距離の短い人(特にNegative vector)はblow lift
が有効であるのではないか
トラネキサム酸の静注や局所麻酔との混合によって術後のダウンタイムの短縮を図れる
→実際これはオキュロで開始しました!
エクスパレルは「リポソーム」というカプセルのような構造に包まれたブピバカインで眼球内容除去・眼球摘出において、術後72時間のゆっくりした鎮痛が得られる。
裏ハムラに代表されるLower eyelid blepharoplastyで眼球突出度が少し改善し、sulcus少し深くなる。
減圧効果がほんの少しあるのではないか?
ボトックスの涙腺注射はC-DCRと同等の自覚症状スコアの改善がみられる
などなどでした。
他思ったのはどんどんAI解析の発表が増えてきていることです。
自分も今後学べる機会を貪欲に求めていかなければならないと思いました。
誰かよかったら教えてください。。
自分の発表に関してはなんとか無事終わることができました。。。
英会話の先生に発音を添削してもらい、何十回も練習したので発表自体はなんとかなりました。
座長のUCSFのRona Silkiss先生が僕を気遣って優しい質問をしてくれましたが、英語がよくわからず明後日の方向の回答をしてしまったのが悔しかったです。。
AAOの解剖実習に参加
あとはAAOの解剖実習に参加し、freshな献体を用いてHughes flapとTenzel flapを学びました。
仙台院院長の目黒先生と拙い英語でなんとか頑張りました。日本ではfreshな献体を用いた解剖を行う機会がほとんどないためとてもいい経験ができました。
全体を通して、海外学会というのは他では得られない本当に貴重な体験でした。専門医をとる前からこの分野に専門を決めてここまで頑張ってきてよかったなと思います。オキュロでは日本トップクラスのたくさんの手術症例があるので今後もデータ化を行うことで今後の眼形成眼窩涙道分野の発展に寄与できたらと思います。今日もありがとうございました!
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2023.09.27
ESOPRSを終えて
今日もよろしくお願いします。
9/18にナポリからフランクフルト経由で帰還しました。
はじめてのヨーロッパ学会でしたが非常に実りになりました。
ヨーロッパにはヨーロッパのコミュニティがあり、独特の雰囲気や有名な先生を何人か知ることができたので今後のお勉強や人脈開拓に活かしたいと思います。
海外学会に何個か行って思ったことですが、ASOPRS以外の眼形成系の学会は若手医師が参加している国が少ないです。
有名な先生は当然たくさん出席しているのですが、その弟子にあたる人がいないのが寂しいなと思いました。
しかし、そんな中自分が出席できていることは本当に贅沢な体験をしているんだなとも実感できました。
一方で自分より後世に色んな意味で投資をしていって次につなげなければならないという責任も感じました。
また、世界中に同年代の眼形成眼窩外科を志す仲間をもっと増やしたいです。
シンガポールの研修医達やAsan medical centerで出会ったJosephやYeong Aのような同年代の仲間がいれば国を超えてみんなでレベルアップしていけます。今後も学会や見学という場をフルに活かして輪を広げていきたいです。
そしてそのためには名刺代わりとなる論文を書かなければならないので、今悪戦苦闘中です。。。。頑張ります。
追加でESOPRSで学んだことを書きたいと思います。
1つ目はIran University of Medical SciencesのNasser Karimi先生の発表です。
ちなみに既に論文化もされているみたいです。
裏ハムラの時にOrbicularis retaining ligamentを外した後、Goldberg methodであればfat pediculeをligamentの下にrepositionするのが伝統的なやり方です。しかし、Karimi先生はmincedした眼窩脂肪をligamentの下に置いてきてそのまま終了という術式を行っていました。
固定しなくもいいのかな、、とか、眼窩脂肪をミンチにしてる時間があればrepositionした方が速いのでは、、、?
とも思いましたが、、、
最大の長所は抜糸を要さずに従来の方法と同等の結果を期待できる、という点です。
手術はより低侵襲になっていくべきなのでもしかしたら裏ハムラのやり方もだんだん変わっていくことが想像されます。
オキュロでもハムラをより低侵襲に、かつ効果を最大にするために色々な思案が行われています。
今後そういうところもデータ化していきたいと思いますのでお楽しみに。
2つ目はWashington UniversityのPhilip L. Custer先生です。
この先生も論文を既に出しています。
Hatchet Flapは僕も勉強不足で知らなかったですが、内眼角や下眼瞼欠損症例に対して中顔面を用いた再建です。
Philip L. Custer, 2018
自分はまだまだ再建術が得意とは言えないですが、このような再建があることがしれてよかったです。
Philip L. Custer先生は70例で4例の肥厚性瘢痕、1例の瘢痕性眼瞼外反を認めるのみで他合併症がなかったとのことでした。
適応症例があればぜひトライしてみたいです。
最後がイギリスのQueen Victoria HospitalのK Ziahosseini先生の発表です。
機能性流涙症への涙腺ボトックス注射についてです。
経結膜で眼瞼部涙腺にボトックスを2.5〜5単位投与することで、涙の分泌に必要なアセチルコリンのシナプス前遊離が阻害され、流涙評価スケールの1つであるMunk scoreが低下するという内容です。
今回の新しい内容は適切に投与すればC-DCRと同程度のMunk scoreの改善が得られるという驚くべき内容でした。
機能性流涙の症例があまり多くないので治療経験はありませんが、今後積極的にやってみたいと思います。
以上です。やっと涼しくなってきましたね。食欲の秋ですが食べすぎずにいきたいと思います。
最後にナポリの朝日です。本当に良い思い出になりました。皆さんありがとうございました。
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2023.09.20
11月の休診日のお知らせ
11月の休診日のお知らせ
当院では、下記の日程にて休業を予定しております。
11月1日(水)
休診日
11月2日(木)
11月3日(金)
11月4日(土)
11月5日(日)
11月6日(月)
11月7日(火)
11月23日(木)
休診日
2023.09.15
はじめてのESOPRS
今日もよろしくお願いします。
今回のブログはイタリア第3の都市ナポリからお届けしてます。
初めてESOPRSに参加しました。
APAOや1st Asia-Pacific Orbital Disease and Thyroid Eye Disease Meeting 2023はアジア規模の学会のため、なんとなく距離が近くてみーんな友達みたいな雰囲気でした。新参者の僕も受け入れてくれたように思いました。
しかし、ヨーロッパ学会は全然違う雰囲気です。
アジア人で参加しているのが各国から1-3人程度しかおらず、特にナポリは街を歩いてもほぼアジア人がいません。
めっちゃアウェイですし英語がまだまだ堪能とは言えないので緊張しますが、新しい知識や経験は本当に素晴らしいです。
自分は今回oral presentationは落ちてしまいましたが、e-Posterでアクセプトされました。
次は是非oralで参加したいです。
学会3日間の初日である本日はpre-meeting courseという総論に近いような内容でした。
話していることを理解するだけで非常に疲れますが、今日見てて面白かった内容を共有します。
まずは眼形成外科医なら一度は見たことであるであろうこの手術動画サイト
で有名なIowa大学のRichard C. Allen先生の発表です。
腫瘍や外傷などによる下眼瞼の欠損について、部位や範囲によって再建方法を変えましょうという内容です。
再建って本当に多岐にわたりすぎてよくわからないのですが、体系的に分けていたので紹介します。
まず第一に前葉と後葉をわけることです。
前葉と後葉は必ずわけることです。
前葉と後葉は弛緩の程度が異なることが多く、また血流の関係から別々に再建しなければならないので前葉後葉は必ず分離します。
再建の順番は必ず後葉からです。常に不足しやすいのは後葉なのでそちらを再建すれば前葉は如何ようにでも再建できます。
また、前葉 後葉を分離して再建すると多くの場合前葉に垂直方向の瘢痕を作らなくてもよくなります。
部位に応じて
下眼瞼外側の欠損は
Rimの骨膜を利用して外眥靭帯再建する。
中央の欠損
前葉と後葉を分離してから後葉のdefect部位を縫い寄せる。
内側の欠損
Cantholysisして後葉を有茎皮弁としてから、前葉と後葉を分離を行います。
その後、後葉の有茎皮弁をmediarに移動させて、Hewes flap or 骨膜を利用したcanthoplastyで再建する。
文章で書くと難しいですが上記のように再建すると非常にわかりやすいです。
Hewes flapてなんぞよ?という方はこの論文を見てみてください。
この方法は三村先生から教わったことでしたが、今回の発表と繋がってとても興奮しました。変態ですね。
https://www.researchgate.net/publication/326676711_Blood_perfusion_in_Hewes_tarsoconjunctival_flaps_in_pigs_measured_by_laser_speckle_contrast_imaging
もう一人興味深かった先生はAthensのGeorge Charonis先生です。
instagramでちょこちょこキレイなlower eyelid blepharoplastyについて投稿している先生です。
https://www.instagram.com/georgecharonis/?hl=ja
方法は典型的なGordberg先生のTransconjunctival Orbital Fat Repositioningです。
皮膚切開よりも経結膜を好むようでした。
やり方はオキュロとすごく似ていましたが、
違うコンセプトでやってたのは
下斜筋をきれいに出して、mediar fat padとcentral fat padが下斜筋の奥でスムーズに動く状態にしてからrepositionするというものでした。
これに関して理由を本人に質問したのですが、上方視した時の下方への牽引が解除されてより平坦に近い下眼瞼になる との回答でした。また、Canthopexyを度々併用するようで、糸は5-0マクソンを使っていました。
lower eyelid blepharoplastyは色々なやり方はありますが、鹿嶋先生含めて世界の手術件数の多い先生のコンセプトは大きく異ならないのかなと思いました。
初日はこんなところでしょうか。
明日も英語と眠気と戦いながら望みたいと思います。またよろしくお願いします。
最後にナポリの絶景の写真を投稿して終わります。ありがとうございました。
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2023.09.02
オキュロフェイシャルクリニック大阪出張!
今日もお願いします!
うだるような暑さですが、9月になりすこーしだけ涼しくなってまいりました。
だんだんコンビニアイスに秋の味覚を意識したアイスが登場し始め、欲求とのせめぎ合いになりますが皆様いかがお過ごしでしょうか?
さて8月1ヶ月間三村先生率いる大阪院に出張の機会を頂き行ってきました!
同じ環境にいると慣れが出て、知識がマンネリ化してしまいます。
新しい環境に行くと、全てが刺激的で活き活きと仕事ができるので非常に気持がよいです。
大阪と千葉県鴨川市を毎週往復し、最初は辛かったですが今は本当にいい思い出になりました。
既に大阪のご飯や人が恋しすぎて悲しいです。お世話になって方々ありがとうございました。
オキュロフェイシャルクリニック大阪は梅田駅近辺にあります。
梅田駅ってものすごい人の多くて最初はかなり驚きました。さすが日本第2の都市です。
食い倒れの街大阪と言いますが、たしかにご飯が安くて美味しいです。
三村先生はよくランチに誘ってくれたので大阪飯を大いに堪能できました。
また、三村先生といえばリサーチの多さです!
三村先生の臨床や解剖に関するクリニカルクエスチョンは非常に豊富です。
ディスカッションしていると、「そこのデータってあるんですか?」って聞くと「もう俺がペーパーにしてるで。」と言われ「すいません知らなくて。。。」と答えることが度々あり申し訳なかったです。
多くのことを学びましたが最近面白いなって思った話を共有します。
最近ハムラについての投稿が多いのですが、またハムラの話です。
下眼瞼脂肪ヘルニア
後葉弛緩
有
無
前葉弛緩
有
表ハムラ(malar flap併用)+canthopexy
表ハムラ(malar flap併用)
無
裏ハムラ
+canthopexy
裏ハムラ
下眼瞼脂肪ヘルニアを図のように分解すると、対応する術式はなんとなくこうなのかなって最近思っています。
これは僕が思ったことでエビデンスがあるわけではありませんが。。
表ハムラでmalar flapを行うと頬部のたるんだ皮膚をぴしっと引き上げることができるので非常に有効です。
その場合大事になる組織がSMASです。
SMASとはsuperficial musculo-aponeurotic systemの略で顔と首に存在する筋膜の一連の層であり、皮膚、筋肉、脂肪といった各種の組織と密接に関連しています。このSMASは、顔全体のリフティングや緊張感をコントロールする主要な構造であり、その理解は美容外科手術や形成外科手術、特にフェイスリフトや眼形成手術において非常に重要です。
Plastic Surgery, Volume 2: Aesthetic Surgery. Fourth Editionより引用
このSMASの理解は、更に高度な手術テクニックにも応用されています。
例えば、SMAS層と連携して動くmalar flapやその他の皮膚フラップの設計においても、SMAS層の性質を理解していると、より効果的な手術が可能になります。
表ハムラの場合は引き上げたSMASをどこに固定すればよいのでしょうか??
SMASは頬部全体に広がっており頬の重さが全てSMAS固定の縫合糸にかかるので強固な固定が必要になります。
ここで眼輪筋の解剖を示したいと思います。
外側のrimに眼輪筋の停止部があります。
眼輪筋には水平方向に下眼瞼を保持する作用もあり、かつSMASを持ち上げるためには強固な固定が必要になるのでこの停止部位の骨膜に眼輪筋ごとSMASを固定するのがおそらく解剖的にも機能的にも有効ではないかと考えます。
全てエビデンスがあることではないですが、仮説としては非常に面白いなと思って共有しました。
三村先生とのディスカッションはとても刺激的で本当に勉強になりました。
また国内・国外留学の機会を今後も掴み取れるように頑張りたいと思います。
今日もありがとうございました!
※三村先生とだけ写真を撮れず悔しかったです。
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2023.08.08
10月25日(水)休診のお知らせ
休診のお知らせ
当院では、下記の日程にて休診を予定しております。
10月25日(水)
休診
2023.08.04
Lower Eyelid blepharoplasty
眼窩下孔を基準にした解剖学と手術への応用
今日もよろしくお願いします。
先日六本木でシースーを食べた帰りに酔っ払ってどうしても麺類が食べたくなり締めのつるとんたんに行ってしまいました。
器も雰囲気も非常におしゃれで、あまりにも美味しかったものでうどん2玉食べてしまいました。。
深夜の暴食ということで体重が心配ですが、あんまり記憶に残っていないのでほぼゼロカロリーと思っています。
皆様も締めに是非。
さて8月は1ヶ月間オキュロフェイシャルクリニック大阪院での勤務になります。
Ho-Seok Sa先生に続き、三村先生の元で新しい知見を学びたいと思います!
固定された環境で働いていると人間楽な方向へ逃げてしまいます。
自分の方法が合っているのかをアップデートする機会があることは非常に素晴らしいことです。
患者様のためオキュロのためより良い治療ができるように頑張ります!
火曜日 亀田総合病院 → 水曜日 大阪院
土曜日 大阪院 → 日曜日 千葉県旭市サンモール眼科クリニック
の移動が6時間とめっちゃ長いですが、若いうちにしかできない経験なので楽しみたいと思います!
いよいよ本題です。
今日は下眼瞼眼瞼形成術(Lower Eyelid Blepharoplasty, 以下LEB)における眼窩下神経の解剖について、眼窩下孔を基準にして詳しく見ていきたいと思います。
眼窩下神経は三叉神経の第二枝であり、眼窩の底部にある上顎骨の眼窩下溝が眼窩底後縁から前内方へと伸び、そのまま眼窩下管となって眼窩下孔から皮下に出ます。
Plastic Surgery, Volume 2: Aesthetic Surgery, Fourth Editionより引用
IMAIOSより引用
LEB中には、当然ですが眼窩下神経を適切に識別し損傷を避けなければなりません。
この神経の損傷は、感覚異常や痛みを引き起こす可能性があります。
したがって、眼窩下孔とその周囲の構造を正確に理解し、手術中にその位置を確認することが重要です。
解剖上は
鹿嶋先生がUCLAのCadaver Dissection Courseで撮影した写真
Plastic Surgery, Volume 2: Aesthetic Surgery, Fourth Editionより引用
これを見ると思ったより上顎骨のrimに近いところに眼窩下神経はいます。
しかし肝心のrim付近にorbital retaining ligament, 以下ORLは存在します。解剖的にどう注意すればいいのでしょうか?
骨を見てみたいと思います。
この人は我が子のようにいつも触っているオキュロの頭蓋骨です。
頬部を見てほしいのですが、
赤で囲んだ部分って凹みになってます。その凹みの中に眼窩下孔がいてそこから眼窩下神経が主に下方に広がっています。
よって凹みの部分にエレバラスパで骨膜をガリガリこするようなことをすると眼窩下神経を損傷します。
この凹みの内側と外側は大事な構造はほぼないので骨膜上にエレバラスパを押し当ててしっかりORLを剥離しましょう。
※特に内側のORLは再発しやすい場所なのでMCT付近までしっかりORLを剥離することが大事です。
そして凹みの部分は骨膜上を攻めずに、内側と外側にできたポケットを中空でつなぐようなイメージでポケットを作ると、比較的安全に広くfat padのtranspositioningできるかと思います。
このやり方で今のところ眼窩下神経損傷は起きていません。
しかし、これらの方法はあくまで経験と目安であり、個々の患者さんの解剖学的な違いを考慮に入れる必要があります。
加えて眼窩下神経が皮下にどのように広がるか正確な解剖はわかっていない部分も多く、あくまでも個人的な見解であるのはお伝えしておくべきかと思います。
眼窩下神経の解剖学的知識を深めそれを手術に適用することが、LEBの成功につながります。
今後も解剖学と臨床の接点について、さらに詳しく掘り下げていきたいと思います。
皆さんの臨床に役立つ情報を提供できることを願っています。次回もお楽しみに!
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2023.07.21
韓国の眼形成外科の最前線
– Asan Medical Centerでの一週間
今日もよろしくお願いします。
7/10-14まで韓国ソウルにあるAsan Medical Center(以下AMC)の眼形成研修を行ってきました。
ソウルは日本からの海外旅行先として非常に人気な国ですが、僕にとっては初めての渡航でした。
AMCにはHo-Seok Sa先生がいらっしゃいます。アカデミックで非常に高名な先生であり、見学実習の体験を共有したいと思います。
Find a doctoreng.amc.seoul.kr
7/9
ソウル金浦空港に到着しAMCへ向かいます。
AMCはソウルの郊外に位置しており、移動がやや大変です。
ソウル峨山病院 · 88 Olympic-ro 43-gil, Songpa-gu, Seoul, 韓国★★★★☆ · 大学病院goo.gl
病院にはresidentやfellowのためのドミトリーが併設されており、そこにcheck inします。
チョコンと置いてあるトイレットペーパーが印象的です。タオルとドライヤーを含めたアメニティは一切なかったですが、1泊1300円程度で滞在させて頂けたので文句は言えないです。この部屋で5泊しました。
7/10
研修初日です。毎週月曜日朝7時半から眼科全体でカンファレンスがあり、参加させて頂きました。
韓国語で多くは分からなかったですが、一週間の手術症例の共有と抄読会といった感じです。
そこで自己紹介をし、IDカードが支給されました。
AMCには沢山のInternational fellowが在籍しており、ガイドも充実していました。
下の写真が研修医室です。デスクを1つ与えて頂きました。
このナイスガイはフィリピンから1年間international fellowとしてきているJoseph Yap先生です。同じ年の31歳でした。
初日はSa先生の一日外来です。午前午後合わせて40-70人程度の外来があります。当然すべて眼形成・眼窩・涙道の患者様です。
韓国の方々ってものすごく丁寧で日本人と似ているなぁと思いました。
甲状腺眼症の活動期に対しては基本的にステロイド局所投与はせず、パルス+放射線療法の方針をとっているとのことでした。
ステロイド局所投与で眼圧上昇した症例が散見されたためそういう対応にしているそうです。
NLDOに関しては最初にLacrimal Duct Intubationを行い、駄目ならE-DCRを行っているようです。
下垂や内反などの手術適応はそこまでオキュロと大きく変わりないのかなと思いました。
初日の診療後に病院の18階にあるレストランで会食を設けて頂きました!
7/11
2日目です。火曜日はSa先生の外来・手術はなく、もう一人の眼形成の教授であるYang先生の手術見学をしました。
Find a doctoreng.amc.seoul.kr
眼瞼手術だけでなく、眼窩骨折の他院修正までされておりかなりレベルの高い手術をしていると思いました。
(骨折に関してはルーペでの手術のため、術野はほとんど見えなかったです。。。。。なぜ世界にmicroscope surgeryが普及しないのでしょうか……??オキュロのmicroscope surgeryの強みを改めて実感しました。)
この日の晩はJosephと飲みに行きました。
7/12
水曜日は一日中Sa先生の手術です。驚いたことは腫瘍がとにかく多い!
一日で眼窩腫瘍と脂腺癌再建と悪性黒色腫の再建と内下壁骨減圧が入っていました。
いくら総合病院だとしてもでもこれだけの症例が集まるのはすごいことだと思います。
Sa先生は腫瘍と骨折の手術が得意分野と仰っていました。
「鹿嶋先生がCosmetic Orbital Surgeryなら、私はCosmetic Cancer Surgeryだ。」と笑いながら話していました。
骨折整復は症例がなく、見られませんでしたが腫瘍再建は非常に手際がよく美しい手術だと思いました。手術時間は約1時間でした。
切除と再建は一期的に行っており、術中迅速診断で断端を確認します。
腫瘍再建は主にHughes flap techniqueを行っていました。
Sa先生曰く、特に上眼瞼の再建時にはanterior lamellarとposterior lamellarだけでなく、middle lamellarの再建が一番重要とのことです。本来middle lamellarという解剖構造はありませんが、上眼瞼の形状維持に非常に有用でありmarginal entropionに代表される術後合併症を大幅に予防できるとのことでした。
middle lamellarとして使用されているのはCG dermという素材です。
CGBIOという韓国のバイオテクノロジー企業が開発した製品で、無細胞同種真皮(Acellular Dermal Matrix)と呼ばれるものです。
これは人間の皮膚から細胞を取り除いて作られた生体材料で、主に乳房再建手術などの形成外科手術で使用されます。Sa先生が好んで使っているようです。
あとは骨減圧についてです。手術時間は両眼内下壁減圧で1.5時間程度でした。
ルーペ手術のため細かいところは見れませんでしたが、ポイントを聞いてきました。
内壁は蝶形骨洞が見えるまでとる。(写真撮れませんでしたが、実際にendoscopeで蝶形骨洞を見せてくれました。)
ホルネル付着部位より前方の骨は眼球偏位の原因となるためとらない。
下壁は上顎洞背側壁まで取る。それより背側の下壁はとるメリットがない。
ノミでstrutもしっかり切除する。
メスでperiorbitaを切開し、副鼻腔へ眼窩脂肪を脱出させる。
終了時圧迫は必ずしも必要ない。
黄色い線で示されている場所が蝶形骨洞です。IMAIOSより引用
自分は骨減圧の経験がほとんどないため、非常に勉強になりました。
また、「骨減圧は術後に必ずCTを確認して、自分の手術でどこまで骨が取れているか必ずupdateしないといけないよ。」と教えてくれました。
表ハムラもやってました。
皮膚切除していましたが、やっていたのは脱脂でした。
オキュロみたいにOrbicularis Retaning Ligamentを外してfat transpositionまではやっていなかったです。
高齢の方はcanthopexyの併用していたのはオキュロと一緒でした。
この日の夜はYang先生とJosephとYeong A先生(domestic fellowの先生、おそらく同じ年くらい?)と会食でした。
7/13
木曜日は午前中は手術、午後は外来でした。
午前中の手術は生検がメインです。眼窩腫瘍が沢山です。
木曜日夕方にはpathologyとradiationについてのZoomカンファがありました。
病理医や放射線科医と話し合いが行われていましたが、韓国語なのでよくわからなかったです。笑
この日の晩はJosephと飲みました。
梨泰院です。
ソウルで一番高いロッテワールドタワーです。その高さは555メートルで、全123階建てとなっています。
7/14
金曜日は隔週で涙道の手術があるようですが、この週はなかったです。。。
Sa先生はこの日5つ会議があるとのことで自由時間だったため、昼からJosephと飲みました。
そして夜送別会を開いてくれました。
Sa先生から「これからも是非国際交流を続けていきましょう。academicでもclinicalでも眼形成を深めていってください。」と言っていただいて非常に励みになりました。
1週間は本当にあっという間でした。この経験は、私にとって非常に教育的かつ刺激的でした。
日本での診療に戻ってから、Asan Medical Centerで学んだ知識と技術を活用して患者さんのために最善を尽くすよう頑張ります!
今日もありがとうございました。
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2023.06.28
WSOPRAS in DubaiとAsia ITEDS in Singaporeを終えて
今日もお願いします。
5月は僕にとっては記念すべき月になりました。
海外学会で初めてオーラルでの発表ができました。小さな一歩ですが僕にとっては大きな一歩です。
「論文もちゃんと書けてないのに海外発表だけしても意味がない!」という意見もあると思います。
僕もそのとおりだと思います。エビデンスレベルでいくと海外発表と論文掲載には雲泥の差があります。
自分はまだまだ統計解析やデータ解釈、英語についての知識が全く足りてない常々思います。
そのことが不安で海外学会に足を踏み入れていいのだろうか…??
という不安も正直ありました。
結果から言うと僕の人生の中で最高の経験の1つになりました。
本当に嬉しいです。2月にマレーシア、5月にドバイでのポスター掲示が採択されましたが、ポスターだと忙しい先生方はなかなか見てくれません。オーラルは初めての経験でしたが、会場内のたくさんの先生が見てくれます。一部の先生は発表後に質問にまで来てくれます。普段自分でやっていることが世界的に認められるのはモチベーションも上がりますし、さらに成長しなければならないと強く自覚します。
思い出がたくさんできました。鹿嶋先生、患者様、助けてくれた先生方やスタッフの方々ありがとうございました。
さて本日のお題は甲状腺眼症に対する脂肪減圧 vs 骨減圧についてです。
この点についてはシンガポール学会でも論点になっていました。
骨減圧代表の中国のHonglei Liu先生と脂肪減圧代表の鹿嶋先生とで議論していたことが非常に記憶に残っています。
Liu先生は眼窩外壁をDuraが見えるギリギリまでMaximumに切除する骨減圧の極地とも言えるような発表をしていました。
対して鹿嶋先生は甲状腺眼症ってそもそも脂肪と筋肉の病気だから骨を削るよりも脂肪切除した方がいいんじゃない?(筋肉は切除できないので。。。)という意見でした。
こういう話っていうはなかなか結論が出ないです。
僕は自分が患者だったら、、、侵襲や合併症を鑑みて脂肪減圧を選ぶと思います。
しかしそれは僕の感想なのでどういう使い分けをしているのか、論文を元に見てみましょう。
韓国のJin Sook Yoon先生の研究室の論文です。
ちなみに上の集合写真の左下の先生です。見た目はすごく若いですが、教授で研究室も持っているとのことです。
Faculty dinnerではビールにチャミスルを混ぜて飲んでいたのがとても印象的でした。
甲状腺眼症の病態に応じて術式を分けましょうという趣旨の報告です。
まずは甲状腺眼症は大きく分けて2つのタイプがあります。
type I →predominantly fat compartment enlargement
type II →predominantly extraocular muscle enlargement
これらの2つのタイプに分かれ、オーバーラップしている場合も多々あり非常に病態が複雑です。
これらのタイプに応じて
type Ⅰの場合は脂肪減圧メイン(不十分な場合は骨減圧併用)
type Ⅱの場合は骨減圧メイン
という風に段階的に減圧術を行いましょうというものです。
2002年にUCSDのKikkawa先生が似たような趣旨の論文を出しています。
ちなみに患者内訳は以下のとおりです。
Fat-only decompression (group 1)
fat and one-wall decompression (group 2)
fat and two-wall decompression (group 3)
two-wall decompression with minimal fat (<1 mL) (group 4)
Myopathy score
3 = primary diplopia or no orthotropia at the primary position
2 = orthotropia at the primary position, but with diplopia within 30° in BSV or more than 10° limitation in HESS
1 = diplopia only outside 30° in BSV
0 = no diplopia at any gaze
そして術後結果です。
どのGroupも減圧効果としては非常に良好かと思います!
しかし骨減圧をすればするほど複視のリスクがどんどん上がることは無視できません…。。。
術後に複視が悪化した患者は8人(14.5%)で、8人のうち6人がgroup 3、1人がgroup 1、1人がgroup 2でした。
group 4は一見scoreの悪化がないように見えますが、そもそも術前から正面視での複視があり術後もそのままだったよ、という結果です。
またLiao先生やHuang先生による報告と同様に、切除した眼窩脂肪量に対する平均Hertel変化量の比は、約1であったと報告しています。つまり眼窩脂肪を1cc切除すると約1ml目が引っ込むよ、というのは共通理解になりつつあるのかな?と解釈しました。
脂肪減圧術は骨の除去を伴わないため、眼窩下神経知覚低下、脳脊髄液漏出、複視などの副作用の可能性は少なくとも理論的には最小限に抑えられます。しかし、国際的にはまだまだちょっと難しくて危険な手術じゃない??という印象だと思います。
今後も減圧術に関するデータを出して少しでも世界に脂肪減圧術の良さを伝えていければなと思っています。
今日もありがとうございました!
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