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韓国の眼形成外科の最前線
– Asan Medical Centerでの一週間
今日もよろしくお願いします。
7/10-14まで韓国ソウルにあるAsan Medical Center(以下AMC)の眼形成研修を行ってきました。
ソウルは日本からの海外旅行先として非常に人気な国ですが、僕にとっては初めての渡航でした。
AMCにはHo-Seok Sa先生がいらっしゃいます。アカデミックで非常に高名な先生であり、見学実習の体験を共有したいと思います。
7/9
ソウル金浦空港に到着しAMCへ向かいます。
AMCはソウルの郊外に位置しており、移動がやや大変です。
病院にはresidentやfellowのためのドミトリーが併設されており、そこにcheck inします。
チョコンと置いてあるトイレットペーパーが印象的です。タオルとドライヤーを含めたアメニティは一切なかったですが、1泊1300円程度で滞在させて頂けたので文句は言えないです。この部屋で5泊しました。
7/10
研修初日です。毎週月曜日朝7時半から眼科全体でカンファレンスがあり、参加させて頂きました。
韓国語で多くは分からなかったですが、一週間の手術症例の共有と抄読会といった感じです。
そこで自己紹介をし、IDカードが支給されました。
AMCには沢山のInternational fellowが在籍しており、ガイドも充実していました。
下の写真が研修医室です。デスクを1つ与えて頂きました。
このナイスガイはフィリピンから1年間international fellowとしてきているJoseph Yap先生です。同じ年の31歳でした。
初日はSa先生の一日外来です。午前午後合わせて40-70人程度の外来があります。当然すべて眼形成・眼窩・涙道の患者様です。
韓国の方々ってものすごく丁寧で日本人と似ているなぁと思いました。
甲状腺眼症の活動期に対しては基本的にステロイド局所投与はせず、パルス+放射線療法の方針をとっているとのことでした。
ステロイド局所投与で眼圧上昇した症例が散見されたためそういう対応にしているそうです。
NLDOに関しては最初にLacrimal Duct Intubationを行い、駄目ならE-DCRを行っているようです。
下垂や内反などの手術適応はそこまでオキュロと大きく変わりないのかなと思いました。
初日の診療後に病院の18階にあるレストランで会食を設けて頂きました!
7/11
2日目です。火曜日はSa先生の外来・手術はなく、もう一人の眼形成の教授であるYang先生の手術見学をしました。
眼瞼手術だけでなく、眼窩骨折の他院修正までされておりかなりレベルの高い手術をしていると思いました。
(骨折に関してはルーペでの手術のため、術野はほとんど見えなかったです。。。。。なぜ世界にmicroscope surgeryが普及しないのでしょうか……??オキュロのmicroscope surgeryの強みを改めて実感しました。)
この日の晩はJosephと飲みに行きました。
7/12
水曜日は一日中Sa先生の手術です。驚いたことは腫瘍がとにかく多い!
一日で眼窩腫瘍と脂腺癌再建と悪性黒色腫の再建と内下壁骨減圧が入っていました。
いくら総合病院だとしてもでもこれだけの症例が集まるのはすごいことだと思います。
Sa先生は腫瘍と骨折の手術が得意分野と仰っていました。
「鹿嶋先生がCosmetic Orbital Surgeryなら、私はCosmetic Cancer Surgeryだ。」と笑いながら話していました。
骨折整復は症例がなく、見られませんでしたが腫瘍再建は非常に手際がよく美しい手術だと思いました。手術時間は約1時間でした。
切除と再建は一期的に行っており、術中迅速診断で断端を確認します。
腫瘍再建は主にHughes flap techniqueを行っていました。
Sa先生曰く、特に上眼瞼の再建時にはanterior lamellarとposterior lamellarだけでなく、middle lamellarの再建が一番重要とのことです。本来middle lamellarという解剖構造はありませんが、上眼瞼の形状維持に非常に有用でありmarginal entropionに代表される術後合併症を大幅に予防できるとのことでした。
middle lamellarとして使用されているのはCG dermという素材です。
CGBIOという韓国のバイオテクノロジー企業が開発した製品で、無細胞同種真皮(Acellular Dermal Matrix)と呼ばれるものです。
これは人間の皮膚から細胞を取り除いて作られた生体材料で、主に乳房再建手術などの形成外科手術で使用されます。Sa先生が好んで使っているようです。
あとは骨減圧についてです。手術時間は両眼内下壁減圧で1.5時間程度でした。
ルーペ手術のため細かいところは見れませんでしたが、ポイントを聞いてきました。
内壁は蝶形骨洞が見えるまでとる。(写真撮れませんでしたが、実際にendoscopeで蝶形骨洞を見せてくれました。)
ホルネル付着部位より前方の骨は眼球偏位の原因となるためとらない。
下壁は上顎洞背側壁まで取る。それより背側の下壁はとるメリットがない。
ノミでstrutもしっかり切除する。
メスでperiorbitaを切開し、副鼻腔へ眼窩脂肪を脱出させる。
終了時圧迫は必ずしも必要ない。
黄色い線で示されている場所が蝶形骨洞です。IMAIOSより引用
自分は骨減圧の経験がほとんどないため、非常に勉強になりました。
また、「骨減圧は術後に必ずCTを確認して、自分の手術でどこまで骨が取れているか必ずupdateしないといけないよ。」と教えてくれました。
表ハムラもやってました。
皮膚切除していましたが、やっていたのは脱脂でした。
オキュロみたいにOrbicularis Retaning Ligamentを外してfat transpositionまではやっていなかったです。
高齢の方はcanthopexyの併用していたのはオキュロと一緒でした。
この日の夜はYang先生とJosephとYeong A先生(domestic fellowの先生、おそらく同じ年くらい?)と会食でした。
7/13
木曜日は午前中は手術、午後は外来でした。
午前中の手術は生検がメインです。眼窩腫瘍が沢山です。
木曜日夕方にはpathologyとradiationについてのZoomカンファがありました。
病理医や放射線科医と話し合いが行われていましたが、韓国語なのでよくわからなかったです。笑
この日の晩はJosephと飲みました。
ソウルで一番高いロッテワールドタワーです。その高さは555メートルで、全123階建てとなっています。
7/14
金曜日は隔週で涙道の手術があるようですが、この週はなかったです。。。
Sa先生はこの日5つ会議があるとのことで自由時間だったため、昼からJosephと飲みました。
そして夜送別会を開いてくれました。
Sa先生から「これからも是非国際交流を続けていきましょう。academicでもclinicalでも眼形成を深めていってください。」と言っていただいて非常に励みになりました。
1週間は本当にあっという間でした。この経験は、私にとって非常に教育的かつ刺激的でした。
日本での診療に戻ってから、Asan Medical Centerで学んだ知識と技術を活用して患者さんのために最善を尽くすよう頑張ります!
今日もありがとうございました。
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著者情報
菊地 良
Ryo Kikuchi経 歴
2016年 | 弘前大学医学部 卒業 |
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2016年 | 青森県むつ総合病院初期研修医 |
2018年 | 亀田総合病院 眼科 常勤 |
2020年 | オキュロフェイシャルクリニック東京 |
2020年 | 新前橋かしま眼科形成外科クリニック |
2024年 | まぶたとなみだのクリニック 院長 |