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orbital adherence syndrome について
時間が経つのは早いものです。
亀田総合病院が12/29に仕事納めをしてもう既に1/3になってしまいました。
まだ「笑ってはいけない」シリーズが年末ではなく、特別企画でやられていた頃に「絶対に笑ってはいけない温泉宿in湯河原」という回がありました。その時に吉田照美さんが「光陰矢の如し、サーロイン肉の如し」と言っていたことが思い出されます。
さて、本日はorbital adherence syndrome(以下OAS)についてです。
なかなか聞き慣れない言葉かと思いますが、
この報告で初めて提唱された概念です。眼窩骨折へのチタンインプラント挿入によって周囲に線維芽細胞が増生し線維性被膜ができて、その被膜により強い癒着が起こり瘢痕性眼瞼後退や外眼筋の運動制限が起きるという病態です。近年何報か似たような報告がされています。
最近オキュロフェイシャルクリニック東京では、他院術後(眼窩骨折や裏ハムラ法など)の様々な眼窩内瘢痕の症例がいらっしゃいます。原因としてはチタンメッシュプレートが不適切な位置に挿入されたものが多くあります。
既報ではチタンメッシュプレートは有効で安全なものであると報告されていますが、他院術後の眼窩を手術でみてみるとプレート周囲が瘢痕でガチガチになっている状態がよく見受けられます。術中に眼窩内組織の不適切な処理を行うと眼窩内に癒着を引き起こすことは想像に難くないと思います。
正常であれば骨膜、Lockwood靭帯、眼窩脂肪が眼球、眼輪筋、眼窩骨の間に隙間なく埋まり介在することでスムーズな眼球運動が得られます。また、眼窩脂肪はKroonneefが提唱した概念によると
上記のようにそれぞれに細かく名前がついているわけではありませんが、眼窩脂肪全体は小さなコンパートメントに分けられます。これらも眼球の位置を安定させ、眼球をスムーズに回転させることを可能にさせます。
よってOASを予防するために
①眼窩脂肪を不用意に弄らず、余計な瘢痕を作らない。
②骨膜や靭帯などは眼窩と眼窩外を隔てる大事な構造のため可能な限り温存する。
③人工物(特にチタンメッシュプレート)は周囲に線維被膜を形成するため、眼窩内に留置せず必ず骨膜下に置く。
以上を心掛けたら良いと思います。今年もよろしくお願いします。ありがとうございました。
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著者情報
菊地 良
Ryo Kikuchi経 歴
2016年 | 弘前大学医学部 卒業 |
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2016年 | 青森県むつ総合病院初期研修医 |
2018年 | 亀田総合病院 眼科 常勤 |
2020年 | オキュロフェイシャルクリニック東京 |
2020年 | 新前橋かしま眼科形成外科クリニック |
2024年 | まぶたとなみだのクリニック 院長 |