BLOG医院ブログ
退行性下眼瞼外反について
浜松で行われた眼窩疾患シンポジウムにて発表してきました。
初のマイナー学会での発表ということでその道のプロの先生方が多数いらっしゃっており冷や汗をかきましたが無事終了できました。ご指導いただいた先生やスタッフの皆様本当にありがとうございました。
初めて浜松に行きました。
海、山、湖の3つが近くにありそれらの幸が全て頂けるという垂涎のスポットでありました。
こちらの店に行かさせていただきました。
こちらのお店は全て浜松産の食材を使用しておりとんでもない地元愛を感じます。
特に感動したのは浜名湖産のうなぎとどうまん蟹です。
うなぎはフワフワに炊き上げるのが普通かと思いますが、こちらのうなぎはカリッカリに焼き上げております。
しかも薬味にはにんにくが使用されており、こーーれは素晴らしい。たまらんです。
もう一つどうまん蟹です。僕は名前さえ知りませんでした。築地にさえほとんど出回らず、幻のカニと言われているそうです。
これもまた素晴らしい。かに味噌の風味がとても強く、また舌触りがとてもよいです。
かに味噌ってちょっとしかないイメージですが、どうまん蟹には大量の味噌が入ってます。
日本酒がスッスと無くなります。あのカニは酒どろぼうです。
浜松食べ尽くしの学会でした。鹿嶋先生ごちそうさまでした。感謝感謝です。
本日は眼瞼外板 Ectropionについてです。下眼瞼はかなり奥深い分野です。
Ectropionはinvolutional, paralytic, mechanicalやcicatricialなどの原因がありますが、全て語ってしまうと今日の僕の睡眠時間は限りなく0になります。今回はinvolutionalとparalytic ectropionの治療法について語りたいと思います。
(個人的にinvolutionalとpalalyticとcicatricialの意味はわかるのですが、mechanicalの意味がわかりませんでした。調べてみると腫瘤、浮腫や嚢胞によって下眼瞼が眼球から離れる方向に引き離されることによって起こる外反を意味するようです。)
Ophthalmology fifth edition より出典
Involutional EctropionはそもそもLERの弛緩(垂直方向)とOOM、LCT、MCT(水平方向)の弛緩が原因です。
それに対して行う術式で一番有名なものはおそらくLateral Tarsal Strip Procedure(以下LTS)と思われます。
水平方向の短縮に極めて有利な術式です。
それを語るにあたってcanthopexyとcanthoplastyの違いを覚えておくと良いかと思います。
canthopexyは「糸で眼角を固定すること」
canthoplastyは「眼角を形成すること」
です。
canthopexyはlateral orbital rimの前面に重瞼線の延長線上の皮膚切開を加え、orbital rimと外眼角を埋没によって短縮させ弛緩したLCTの短縮を図ります。程度の弱い水平方向の弛緩に有用で、眼角に切開を加えないため整容的に優れます。
canthoplastyは弛緩した前葉+後葉を切除しtarsusとthe lateral orbital rimを縫着するため強い矯正効果がありますが、眼角を切開するため整容的に劣ります。
当院ではinvolutionalとparalyticのectropionについてLTSとmediar tarsorrhaphyを行なっております。
下眼瞼のlateralとmedialのdistraction testを行い、下眼瞼の弛緩が外側なのか内側なのか、もしくは両方なのかを判断します。
外側の弛緩がメインであれば、LTS
内側の弛緩(下涙点の外反、上下涙点間距離の拡大など)の場合はmediar tarsorrhaphyを行います。
Ophthalmology fifth edition より出典
LTSの切除量に関してさらっと調べた感じでは一定したconsensusはないと思われますが、弛緩の程度に応じて5-8mm程度の切除を行います。切除過多には要注意です。
縫合時のコツはとにかく瞼縁を揃えることです。しっかり瞼縁を揃えないと外眼角がdullになってしまったり、創離開の原因となります。
このLTSの固定の仕方についてmodified LTSなるものが近年報告されてきているようです。
どれが一番成績が良いかは直接比較しないとわかりませんが、試してみたいものです。
Modified lateral tarsal strip for involutional entropion and ectropion surgery
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2017 Mar;255(3):619-625.
The Use of a Double Suture and Conjunctival Cuts in the Lateral Tarsal Strip: A New Approach to Involutional Ectropion
J Craniofac Surg. 2018 Nov;29(8):2312-2315.
mediar tarsorrhaphyは上下涙点より内側の結膜を皮膚粘膜移行部まで切除し、上下縫い合わせる術式です。
上図では念入りに縫合を行なっておりますが、現在当院ではここまでせずに皮膚縫合のみ行っております。
離開がほぼないような印象ですが、いずれstudyを行っても面白いかもしれません。
本日はここまでにしたいと思います。また長くなってしまいました。
オタク気質のため一度書き始めるとなかなかやめられないです。
しかし知識欲が満たされ、成長することはドパミン系の快感が得られます。
今日もありがとうございました。
関連記事
「ドクター紹介」を詳しく見る
「初めての方へ」を詳しく見る
「治療案内」を詳しく見る
「手術件数」を詳しく見る
「アクセス・医院情報」を詳しく見る
著者情報
菊地 良
Ryo Kikuchi経 歴
2016年 | 弘前大学医学部 卒業 |
---|---|
2016年 | 青森県むつ総合病院初期研修医 |
2018年 | 亀田総合病院 眼科 常勤 |
2020年 | オキュロフェイシャルクリニック東京 |
2020年 | 新前橋かしま眼科形成外科クリニック |
2024年 | まぶたとなみだのクリニック 院長 |