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高齢者の眼瞼下垂について
今日もよろしくお願いします。
現在臨床眼科学会に向けて抄録を作成中です。締め切りは5/12正午までです!内容は先天性睫毛内反におけるHotz変法とlid margin splittingの併用の手術成績についてです。既報を調べてみると案外発表歴があんまりないようですので眼形成の歴史の進歩に寄与できれば嬉しい限りだと思います。
今まで専門を決めていなかったときは「学会発表、論文作成なんて必要ないでしょ」「お金と時間をかけて得られるものは名誉だけじゃないの?」「別に給料が増えるわけじゃないし、誰に褒められるわけでもないし」「上司に直していただく時間も申し訳ない」などと否定的な考え方でした。
しかし、専門が決まると「自分のやっていることが正しいのか」「正しいと思ってやっていたことが実は時代遅れなのではないか」「手術成績がいいのであればそれを医学会に広めるべきではないのか」「自己完結型の医療だと自分も自分以外も成長しないのではないか」「常に患者様にアップデートした医療を提供すべきではないか」「自分を育てていただいた環境にあらゆる形で恩返ししたい」などと色々考えるようになりました。かなり考え方が深まったように感じます。こういう考え方になると人生がポジティブフィードバック状態になります。眼形成で専門を突き詰めれば突き詰めるほど自分も職場の人間も患者様もみーーんなハッピーになれるなーーーと最近心から思ってます。こんな考え方に到れたのも多くの方にご指導いただいたおかげです。
「イノチノオンジンカンシャエイエンニ」
「感謝するぜ お前と出会えた これまでの 全てに」
です。(元ネタわからない人は調べてみてください。)
高齢者の眼瞼下垂について
さて、本日は高齢者の眼瞼下垂についてまとめます。
当院は銀座にあるため比較的若年の患者がいらっしゃいます。正直若年の方の手術は極めてやりやすいです。
肌に張りがあって切りやすいし、萎縮や脂肪変性がなく解剖がわかりやすいし、手術結果が出しやすいです。
僕の働いている亀田総合病院では若い人はあまりこないです。実際どこの病院でも受診されるのは高齢者が多いところがほとんどだと思います。しかし高齢者では手術が困難になることが多いです。
眼球運動が全体的におぼつかず、術前の挙筋機能測定が難しい。
皮膚が薄くて張りがないためすぐにちぎれてしまう。
皮膚弛緩が強いため皮膚切除量が多くなる。
aponeurosisが萎縮し、ペラペラになっておりすぐに穴が空いてしまう。
ミュラーが脂肪変性しており、組織間の同定が難しい。
術後挙筋を短縮しすぎるとすぐにドライアイが起きる。
DM、抗血栓薬内服、腎機能障害など様々な理由で周術期管理が難しい。
緑内障点眼をしている人、レクトミー後のblebがある人、ベル現象が麻痺している人などは上げ過ぎ注意。
など困難な理由がたくさんあります。
実際自分もaponeurosisの同定が困難でモチョモチョしている内にaponeurosisをグズグズにしてしまった経験があります。
鹿嶋先生ごめんなさいです。
あとはまぶたが下がり過ぎて吊り上げか挙筋短縮のどちらがいいのか判断に迷う時が少なからずあると思います。
眉毛の位置に注目です。先天下垂で吊り上げを要する方は瞼縁〜眉毛間距離が他の方と比じゃないです。
また、「お若い頃にもほぼ今と変わらない目つきでしたか?それともパッチリ目でしたか?」と聞いてみるのも鑑別診断に有用です。若年時から下垂があったのであれば先天下垂の要素が強くあるため吊り上げ適応があると思われます。逆に若年時は比較的パッチリ目だったのであれば挙筋機能が一見低下していても挙筋短縮術をトライしてみてよいと思います。
いずれにせよ高齢者ほど術前診断、解剖の同定、切開、縫合手技を確実に丁寧に行う必要がありますのでご留意を。
さて最後に今日の手術の反省点を挙げます。
挙筋短縮術の時に眼窩脂肪がもりもりの人がいました。
僕の思考回路は「お!眼窩脂肪じゃん!今の俺なら余裕で切除できるぜ!」でした。
そして眼窩部に麻酔をかけて脂肪を切除しました…。
皆様、下垂オペの術中に眼窩部に麻酔を追加するときは必ず短縮の矯正量を確定した 後!! にしましょう。当然ですよね…
でないとlevator complexに麻酔が効いてしまい、術中定量ができなくなります。
(結果だいたいの前転量で手術終了となりました…)
自分の手数が増えてきたことで欲が出ました。恥ずかしい限りです。
今後も欲を出さずに頑張ります!今日もありがとうございました!!
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著者情報
菊地 良
Ryo Kikuchi経 歴
2016年 | 弘前大学医学部 卒業 |
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2016年 | 青森県むつ総合病院初期研修医 |
2018年 | 亀田総合病院 眼科 常勤 |
2020年 | オキュロフェイシャルクリニック東京 |
2020年 | 新前橋かしま眼科形成外科クリニック |
2024年 | まぶたとなみだのクリニック 院長 |