BLOG医院ブログ

2021.06.27

眼窩下壁骨折について part.2

今日もお願いします。   今日はご飯の話はなしです。楽しみにしていた方はすいません。   このブログに引き続いて、youtubeでの動画をアップさせていただきました。 自分で撮った訳ではなく、鹿嶋先生に全て段取りをつけていただいて撮影いたしました。 私自身の力ではありませんので悪しからず。   知り合いや家族からは「うさんくさい」「詐欺師みたい」「猫背直せ」「噛みすぎ」「ヒゲ脱毛しろ」などたくさんの好意的な応援メッセージをいただいております。ありがとうございます!まだご覧になっていない方は是非ご覧になってください。 まだ専門を決めていない先生方にとっては、「専門・進路を決めた医者の思考回路」という1例報告みたいな感じで聞いていただけたら幸いです!貼っておきます。   眼窩下壁骨折について さて今日も骨折についてです。2例目です。今回は下壁とstrutの再建を要する症例についてです。 ぬぅー難しいです。 基礎中の基礎ですが、まずは下方rimへの到達です。 下記に2つの文献の解剖図について記します。   Plastic Surgery: Volume 2: Aesthetic Surgery. Few, Julius; Ellis, Marco. Published January 1, 2018. Pages 296-325.e2. © 2018.   柿崎 裕彦:手術治療からみた眼瞼解剖. 臨眼 62(13):1939-1944,2008   まずは下眼瞼結膜からLERを切離して下方rimへアプローチしますが、結膜をなるべく結膜をキズづけないように注意します。 レクトミーでは「結膜は宝物」とよく言われます。このアプローチ後に癒着を起こし円蓋部の垂直方向の短縮を引き起こすことがあるので結膜をむやみに有鉤鑷子で把持したり、牽引糸で傷つけないように注意しましょう。   LERに牽引糸をかけたところでしっかり展開を行います。前回のブログで話した通り、orbitaにも入らないようにかつ眼輪筋も傷つけないように進まないと行けません。   上図でも分かる通り、その道のりは極めて難しいです。 眼窩脂肪がうっすら見えてきたり、逆に茶色っぽい眼輪筋が見えたりするとその度に軌道修正しながら下方rimに到達するという流れになります。脳ベラなどで常に下方rimに触れながらアプローチするとやりやすいかと思います。 下方rimに到達したら余分な組織を除去し骨膜切開を行いますが、左右にしっかり展開を行いましょう。経結膜アプローチには「術野が狭い」という最大のデメリットがあるので結膜と組織をしっかり左右に広く展開することが大事になります。内壁へのアプローチ時は涙丘部結膜切開も加えなければならないです。結膜切開を内側に展開する場合はそこを考慮して進めましょう。   reope時に骨膜下を進んでいくとき、前回のアプローチが不適切であることがあります。改めて骨膜に切開を入れてしっかりと骨膜下に入りましょう。当然左右に広く展開しましょう。   骨膜下を進み、骨折の後端が見えて初めて完全な整復ができます。骨折の全容が見えていないときはそれは嵌頓した眼窩組織がまだあるということに他ならないので骨折の後端をしっかり剖出します。   若年の眼窩底骨折は若木骨折のように「しなる」骨折のため、骨の位置の矯正し嵌頓を除去すれば治ります。 しかし、成人以降、特に高齢者では骨がバラバラに砕けるため再建材料が必要になります。   今回はスーパーフィクソーブにて再建を行いました。鹿嶋先生に「眼窩底の形に整形してみなさい」と言われ、背筋がナイアガラの滝になりました。なんとなくCTでみた眼窩底の形はあったのですが、頭の中の3Dが出来上がっておらずヘンテコリンな形になってしまいました。こればっかりは何回も切って覚えるしかないのですが、鹿嶋先生曰く「アフリカ大陸の形のように切りなさい」とのことでした。CT画像を土井先生にご指導頂きましたが、眼窩底の形って確かにアフリカ大陸に似ているなと思いました。 もしスーパーフィクソーブを整形する方がいらしたら参考にしてみてください。     骨折については以上です。       話はかわりますが、別にご指導いただいたことを紹介します。 当然っちゃ当然なんですが、いまだにできていなかったことが「皮膚を垂直に切ること」です。メスを皮膚に対して垂直に切らないと創傷治癒に悪影響です。そぎ切りはいけません。刺身包丁で刺身を切るように皮膚は切ってはいけません。 眼瞼は平らなところがないため、凹凸を意識しかつもう片手でしっかり皮膚にtensionをかけて切開を行いましょう。 今更ですが、本当に大事です。ご留意を。     またひとつ成長できました。周りの先生方、スタッフに感謝陳謝です。 今日もありがとうございました! 関連記事

2021.06.24

levator complex resectionについて

今日もよろしくお願いします。   何故かなかなか痩せない菊地です。何故なのでしょうか。皆目不明です。誰かわかったら教えて下さい。 さてみんな大好き美味しい美味しい餃子の話です。 ↑千葉県君津市小糸という地域の名産の餃子です。     小糸という地域は都内から僕の住んでいる鴨川市に車で向かう途中に通る地域です。自分はてっきり町の名前かと思っていたら違うようです。以下Wiki大先生の引用です。   小糸町(こいとまち)とは、千葉県君津郡にかつて存在した町である。現在の君津市の中部に位置している。 現在の房総スカイラインの沿線に当たり、東京湾アクアライン経由で東京都と鴨川市方面を結ぶルートとなっている地域である。君津市立小糸中学校などにその名をとどめている。   「かつて存在した」とか「その名をとどめている」とかなんとなくカッコいいですね。「幻の大地」みたいです。   そこに「なごみ味噌」という商品があります。 なごみ味噌は、君津市小糸川流域で守り育てられてきた幻の大豆「小糸在来(R)」を原料に、君津産コシヒカリで作った米麹を加え樽詰めで熟成させた味噌です。     今回紹介した餃子は餡になごみ味噌を使用し、メインの具としてサバやレンコンが入っています。個人的にはレンコン餃子の方が好きです!味噌味の餡にレンコンのシャキシャキ食感がたまらない商品となっております。僕は冷蔵庫に常に備蓄しております。   なごみの里君津農産物直売所(千葉県君津市大井126)というところで売っております。生憎オンラインでは売ってないようです…。遠いかと思いますが、もし車で鴨川シーワールドなどに行かれる用事があれば通り道ですので寄ってみて下さい。個人的には冷凍餃子トップ3には入ります。         さて本日はlevator complex resectionについてです。 先日執刀させていただきました!感謝感謝です。新しい経験がどんどんできて血沸き肉踊ります。   当院はaponeurosisを主体とした眼瞼下垂手術をしております。実際にやってみてほっとんどの人はそれで問題ないのですが、術前のlevator functionが正常範囲でも一部どうしても上がらない人がいます。 その場合Muller筋も併用したcomplexの前転が必要になります。 以前ブログで紹介したtuckingを併用する方法もありますが、今回はcomplex resectionについて述べます。   瞼板までアプローチは割愛しますが、瞼板からaponeurosisを切離し、Muller筋を露出できたらMuller筋と瞼板を切離します。 Mullerは支配神経が異なるため、結膜とMullerの間にしっかりと麻酔します。 Mullerと結膜は疎な結合組織で結合しているため、ジョキジョキ切らずに鈍的剥離でスルスル剥離できます。 (ちなみにresection施行歴のある症例ではapoと結膜が癒着しており、鈍的剥離だと結膜に穴が開きますのでご留意を…) Mullerの血管走行は横で、結膜は縦なのでメルクマールになります。 Mullerと結膜を剥離することが開瞼抵抗の減弱につながるのでしっかり剥離し、complexを一塊にして瞼板に固定します。 complexを寄せるのは抵抗が強いため、水平マットレス縫合で適宜5-0シルクを使った方が前転しやすいです。 (※この時にどうしても前転が足りなければ、complexの先端を少し切除すれば上がる時があるようです!)   そしてこれだけ前転すると結構閉瞼仕切らないことがあります。 臥位ということと眼輪筋が麻痺しているということから、眼瞼を押し下げて閉瞼できれば大丈夫です。   仕上がりが楽しみです!     本日は以上です!!最近眼形成の内容よりもご飯の内容が濃くなってきて複雑な気持ちです! 今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.06.17

睫毛内反・眼瞼内反・睫毛乱生について

今日もよろしくお願いします。   僕は亀田総合病院のある千葉県鴨川市というところに住んでいます。 住んで4年目になりますがいいところです。 有名なのは鴨川シーワールドのシャチのショーでしょうか。   安房鴨川駅から徒歩10分程度の場所に僕が好きなお寿司屋さんである「笹元」さんがあります。 このお寿司屋さんが好きなんですよ。店長夫婦で板前さんをされております。   私レベルの人間が美味しいというものなんてたかが知れていると思いますが、美味しいんですよ。 地元で獲れた新鮮な魚介類をとにかく日本酒に合うような極上の肴にしてくれるんです。 そういう点では必ずしも寿司屋というよりは海鮮居酒屋に近いかもしれません。 今もブログ書きながら喉を鳴らしております。   千葉県の外房という地方は金目鯛がよく獲れます。5,6月が旬です。 なぜ旬なのかというと産卵に向け沢山の餌を食べることで身に脂が乗るからです。 定期的にヨダレを垂らして入店するのですが、先日伺った時に初めて出たのがその産卵期の金目鯛の卵です。 正に珍味というやつです。なかなか食べたことある人は少ないのではないでしょうか?   ただ写真を撮り忘れました…。ごめんなさい。 見た目はThe 魚卵!って感じです。 品を出す時に板前の旦那様が「ハッピバースデーつーふー!」と言って出してくれたのがいい思い出です。 もう日本酒と抜群の相性です。アロプリノールまっしぐらです。 田舎でしか食べられないものを食べられると多幸感に包まれますね。 みなさんも機会があれば是非ご賞味ください。       さて本日はさかさまつげ系の話です。手術手技というよりは病態についてです。 最近亀田総合病院でも細々と眼形成手術を始めたのですが、後輩の医師からちょこちょこ「先生。睫毛内反のおじいちゃんが来てますが診てくれませんか?」と聞かれます。その時点でピンと来ます。実際見てみると大体眼瞼内反か睫毛乱生です。 他にも「睫毛内反の手術ってJones変法ですよね?」って聞かれますが、Jones変法は眼瞼内反に対する術式です。先天性睫毛内反の若年者には選択しない術式です。   同じ逆さまつげでも病態でよって術式が全く異なります。 自分もよくわかっていなかったですが、改めてまとめたいと思います。   睫毛内反は睫毛を外反させる穿通枝の欠損によって生じます。また余剰な皮膚や眼輪筋が睫毛を眼球方向へ圧排することも病態に拍車をかけていることが多いです。治療法はHotz変法、Lid margin splitting、埋没法などがあります。当院ではHotz変法+Lid margin splittingの併用を行なっております。   下眼瞼内反は垂直方向の弛緩(LERの弛緩)、水平方向の弛緩(LCTとMCTの弛緩)、前葉組織の弛緩(皮膚、眼輪筋の弛緩)、眼球位置の変化が病態です。治療法は多岐にわたりますが、有名なのはJones変法で他にLER plicationや眼輪筋短縮術やLateral tarsal strip、埋没法などがあります。当院では病態によって分けていますが、LER plicationを主に行なっております。   睫毛乱生は眼瞼の炎症や外傷(トラコーマ、熱傷、 Stevens-Johnson症候群、PG点眼など)が原因となり睫毛根部に瘢痕を形成し、睫毛の生える方向が変化することが原因と言われています。その中でも睫毛列全体が眼球に向かって生えている場合は睫毛重生となります。治療法は毛根除去、anterior lamellar resection(≒Wojno法)、電気分解法などがあります。当院では毛根除去やWojno法を行なっております。       どんなに手術が上手でも病態を考えずに誤った手術選択をすると治りません。 正しい病態理解に努めます!一緒に学んでいけたら幸いです。   今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.06.08

眉毛下皮膚切除について追加で学んだこと

さて眉毛下皮膚切除について追加で学んだことをご報告します。 眉毛皮膚切除は奥が深いです。顔の印象を大きく変えずに効果が得られるので選択しやすい術式です。 内容も皮膚切除してただ縫い寄せるだけというシンプルな術式ですが、それだけに術者の腕が如実に出ると思います。   そうです。   シンプルを極めればピュアになる。   またもや言いたかっただけですね。すいません。       基本的な創の切開の仕方や縫い方は以前Eyebrow liftingの時にまとめた通りですが、追加のポイントを3つ説明します。   1つ目のポイントは皮膚を切り取る時に皮下脂肪もしっかり切除しておくことです。 創部内に脂肪がたまっていると余計な組織があるためevertしづらくinvertになりやすくなります。 余分な脂肪はしっかり切除するように心がけましょう。   2つ目のポイントはROOF切除併用も選択肢に入れておくことです。 上眼瞼の外側がpuffyな方はRoof切除を併用すると欧米人のようなより美しい瞼になります。 切除の流れを分かる範囲で説明すると、 ①眼輪筋の線維に沿って横切開を入れて、Roofを露出させます。 ②眼輪筋に切り込みすぎないように(accessory foldの原因)Roofの前面を露出 ③その後眼窩隔膜に切り込まないようにこそぐように切除します。(ジョキジョキ切ると術後凹みが出てしまいます。) ④切除時はRoof部位の麻酔追加を忘れずに。 ⑤創縁のlayerを合わせるため、非吸収糸で眼輪筋を寄せておく。 その後は型通りです。   3つ目のポイントは連続縫合時は創縁をしっかりつまみevertさせて、皮膚に直角になるように通糸することです。 真皮縫合時点でしっかり寄せることが大前提ですが、連続縫合時もテキトーにやったら瘢痕が残ります。 一気に通糸するのではなく、創縁に通糸する度にしっかり有鉤鑷子でつまみ連続縫合しましょう。 とにかくevertです。     自分もまだまだまだまだです。でも今日が人生で一番若い日ですので諦めず進みます。 今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.06.02

眼窩骨折手術について

今日もよろしくお願いします。   先日月島もんじゃを食べさせていただきました。小さい頃からお好み焼きは好きでしたが、あれは本当に素晴らしい食べ物です。 食べる前のもんじゃのイメージって「ほぼ液状のゲチャゲチャしたよくわからないもの」でした。 本当にすいません。あれすごーーーく美味しいです。しかも作る過程がエンターテインメントです。   具材の上にお出汁の効いた生地がヒタヒタに入っており、まずは具材だけを鉄板の上に出してしっかり炒めます。 そのあとにドーナツ状の土手を作成し、その中にお出汁を入れます。 この時に土手が崩れてお出汁が流れ広がると「あー!!下手くそ!!」となります。あのワクワクがいいですね。 そしてそのお出汁と具材を混ぜて炒めます。 それをうすーく伸ばしておこげを作って小さいヘラで剥がしてこそぎ取ってハフハフと頂くという流れです。   何より香りが最高なのとお出汁の味がしっかりついた「おこげ」が絶品でございます。 できたら一人ではなくグループで鉄板を共有しワイワイ食べるとよいです。美味しさが倍増です! 一度ご賞味ください。       さて今回は眼窩骨折手術についてです。 眼窩下壁骨折手術を執刀させて頂きました。偉そうに執刀と言っても触り程度ですが…。 眼瞼に引き続いてorbitaにも執刀の機会が出てきて嬉しい限りです。関わった方々には感謝感謝です。 骨折についてはまったく教科書がないです。色々な発表資料や解剖、オペ動画をたくさん見て、執刀し怒られながらやらないと覚えられないなと痛感しました。現時点でポイントだなと思ったことを列挙します。   まずアプローチについてですが、当院では経結膜アプローチで行なっております。 Lynch切開、Subciliary切開、外眥切開などの皮膚切開アプローチもあります。色々な考えがあっていいと思いますが、多かれ少なかれ瘢痕が残り、かつ縫合に時間が取られるため当院では行っておりません。   眼窩内にしっかり麻酔をした上で下眼瞼結膜とLERを切離し、牽引糸をかけます。     その後助手に筋鉤で下眼瞼を牽引してもらい、眼窩の下方rimを露出しています。 この時に第1関門です。orbita内に入らないこと、眼輪筋に切り込まないことです。 下眼瞼を牽引されている状態だと頭の中の解剖3D構造があまり役に立たなくなるのでひどい場合は容易に皮膚に穿破します。 めちゃくちゃ恥です。常に常に眼輪筋を切り込まないように注意です。   眼窩下縁を出すまでは不用意にスプリング剪刀で切り込まず、愛護的に下縁に到達します。 その後形成剪刀にて眼窩隔膜と結合組織をrimの少し下方で切開をいれて骨膜を露出させます。 骨膜が露出できたらrimに15番メスで切開を入れて骨膜剥離子で下壁の骨膜下に入っていきます。 骨に対して骨膜剥離子が直角になるように用い剥離を進めます。 内側、外側からもアプローチします。特に内側には涙囊や下斜筋付着部がありますが、しっかり骨膜下で剥離できていれば怖がらずに剥離を進められます。止血の役割+眼窩脂肪を寄せておく役割を期待して、ボスミンベンシーツを用います。   そして骨折部位の全域を明らかにします。 そして上顎洞落ち込んだ組織を引き戻します。見てわかると思いますがめちゃくちゃ視野が悪いので顕微鏡を色々な角度に動かして行います。   最後にスーパーフィクソーブを眼窩形状に合わせて切り抜き、骨折部位に挿入します。 入れただけだと脂肪が嵌頓していることがあるためFoced duction(直筋を把持してグイングイン眼球を回すこと)にて眼窩脂肪を自然な位置に戻しておきます。その後ケナコルトを眼窩内に撒きます。   結膜は無縫合で終了です。     手術の工程は以上です。何やらさも自分が完刀したかのように話していますが、鹿嶋先生の横でふむふむと聞いていたことをまとめただけです。すいません。機会をいただける限り早い内に完刀を目指します!   今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.05.26

涙囊鼻腔吻合術について

今日もよろしくお願いします!   生まれて29年間ずーーーーっとダイエット中の菊地です。ダイエット歴が29年続きそろそろベテランと呼べるところまで来たかと思います。周りを見て29年間ダイエットを続けている人がいるでしょうか?いやいないと思います。 ダイエットなんて簡単ですよ。僕は何回もやってます。 僕は相当努力家だと思います。 ちなみに今日は焼肉を頬張りました。冷麺と石焼チーズビビンバも追加しました。 ダイエット歴が30年になりそうです。またダイエットベテランに一歩近づきました。引き続き頑張ります。   涙囊鼻腔吻合術について さて本日は涙囊鼻腔吻合術鼻内法についてです。 眼科医になったときはよもや骨を削ることとは思わなかったです。   よもやよもや。柱として不甲斐なし。   言いたかっただけです。   涙囊鼻腔吻合術(以下DCR)。そもそも見たこともない先生方も多いのではないでしょうか? 僕は亀田総合病院で研修してて名前も知らなかったです…。お恥ずかしい。   流涙の治療と言うと思い浮かぶのはチューブ挿入かと思います。 涙道閉塞であれば内視鏡で閉塞部位を穿破すれば開通が得られます。その場合はチューブを留置すると改善が得られます。   チューブ挿入されている先生方ならわかると思いますが、チューブで治る人ってそんなに多くないの気がします。 一度治ってもすぐに再発したり、そもそもチューブ挿入していても流涙が続いていたりと結構難渋することが多いです。 そういう症例って結構鼻涙管が狭くなっていることが多いです。 閉塞と違い、狭窄の場合はチューブではほとんど改善しないです。   そんなときのDCRです。 鼻腔と涙囊を直接吻合させるため手術成績は90%以上と言われています。   成功率の高い手術でいいじゃん!と思いますが、成功率の高い手術ほど再発すると極めて悔しいです。 ポイントは大きく二つあるかと思います。   1つ目は骨窓の大きさです。 当然ですが、小さい骨窓だと再閉塞してしまうためある程度の大きさが必要です。 大きさについて決まった指標はないですが、上縁は内総涙点の高さまで骨窓を拡大すると再発率が低下します。 (まだまだちっちゃい骨窓しか作れなくて奮闘の日々です…!)   2つ目の涙囊切開の仕方です。 骨窓作成後に涙囊を切開しますが、涙囊内腔を観音開きに展開すること(marsupialization)が大事です。鼻内法でも鼻外法でもこの手技をしっかり行うことが再発率の低減につながります。当院ではそれに加えて最後にボルヒールを散布して、さらに観音開き状態で固定させる手技を追加しております。   細かいポイントは他にもありますが、上記を忠実に行えば再発率の低減に大きく寄与できると思います。   術後は鼻出血が怖いです。高齢と涙嚢炎の既往があれば術後鼻出血の遷延のリスクが上がると言われています。   抗血栓薬の中止の可否についてですが、当院では必ずしも中止を行なっておりません。   Wendy Smith, Christos Merkonidis, Mark Draper, Matthew Yung: Endoscopic dacryocystorhinostomy in warfarinized patients. Am J Otolaryngol. 2006;27(5):327-9. Wendy Smith, Christos Merkonidis, Matthew Yung: Endoscopic dacryocystorhinostomy in patients with taking aspirin perioperatively. Am J Otolaryngol. 2006;27(5):323-6.   鵜呑みはいけませんが上記の論文によると、バイアスピリン、ワーファリン使用患者において必ずしも抗血栓薬の中止は必要ないのかもしれません。実際当院でも重篤な鼻出血はほぼ起きていません。ご参考にしていただけたら幸いです。   今日は以上にします。ステイホームですが、皆さん油断せずスリムアップに努めましょう。 今日もありがとうございました!   関連記事

2021.05.17

再手術について

さて今日は再手術についてです。 白内障手術と違い、眼形成手術には少なからず再手術が必要です。悲しいですが…。CCCの大きさや強角膜創の長さは術直後と術後1週間でほぼ変化することはないですが、眼瞼は術直後に「ビシッと決まったなこれは」と思っても手術2週間後に見てみると様相が変わっていることがあります。思ったより左右差が出ていたり、低矯正・過矯正があります。悲しいですが…。   先日再手術を執刀させて頂いたのでご報告致します。   術後修正はいつまでに行えばいいのでしょうか?? たまに「半年様子を見てみましょう。」という意見を聞きますが、半年待って何か改善するならそれでもいいんですけど術後早期の時点で微妙な仕上がりだと経過見ても大体微妙な仕上がりです。しかも微妙な仕上がりを患者様に半年待っていただくのも気持ち悪くて嫌です。   創傷治癒的に術後6時間〜7日目が炎症期、7日目〜3週間までが増殖期、3週間以降が成熟期と言われます。 炎症期はいわゆるめっちゃ赤くなって腫れる時期です。この時期はクーリング、圧迫が大事です。 増殖期は肉芽組織が形成され、創が収縮し始めます。線維芽細胞、血管内皮細胞の遊走、増殖が促進されます。 成熟期は瘢痕化が進み、創強度が増します。   創部が成熟期に入ると、完全に瘢痕化が始まってしまうため再手術は術後2, 3週以内が望ましいと思われます。その時点で再手術すると切開を加えずとも把持+牽引だけで前回のlayerで創を離開できます。変な力を加えず必ず前回のlayerで創を展開します。そうすれば自ずと前回の固定糸が出てきます。   前回手術時の固定糸の位置を目で覚えて過矯正であれば前転量を少なく、低矯正であれば前転量を増やして固定し直します。過矯正時に前転量を少なくするのは簡単ですが、低矯正時に前転量を増やしても低矯正が残存する場合が大変です。   apoの近位部に固定し直しても低矯正が残存する場合、2つ対策があります。   1つ目はMuller tuckingの併用です。aponeurosisをどれだけ短縮しても良好な開瞼を得られない場合、下垂の主因がaponeurosisではなくMullerにあると考えます。実際今回の症例はtuckingの併用で良好な開瞼が得られました。下垂の主因がaponeurosisかMullerにあるかを術前に判断するのは非常に困難です。術中の定量、術後経過観察にて判断しましょう。   2つ目は瞼板の固定位置を変えることです。やや愚策ですが…。普通であれば瞼板の上縁付近に固定しますが、どうしても開瞼が得られない場合の救済策として瞼板の上縁より下方に固定します。あまりにも下縁付近だと歪になるので注意です!     当院だと再手術を外来の合間にぱぱっと行わなければならないのでスピードを更に上げないとついていけないです!! まだまだ頑張ります!今日が人生で一番若い日です!今日もありがとうございました! 関連記事

2021.05.07

高齢者の眼瞼下垂について

今日もよろしくお願いします。   現在臨床眼科学会に向けて抄録を作成中です。締め切りは5/12正午までです!内容は先天性睫毛内反におけるHotz変法とlid margin splittingの併用の手術成績についてです。既報を調べてみると案外発表歴があんまりないようですので眼形成の歴史の進歩に寄与できれば嬉しい限りだと思います。   今まで専門を決めていなかったときは「学会発表、論文作成なんて必要ないでしょ」「お金と時間をかけて得られるものは名誉だけじゃないの?」「別に給料が増えるわけじゃないし、誰に褒められるわけでもないし」「上司に直していただく時間も申し訳ない」などと否定的な考え方でした。   しかし、専門が決まると「自分のやっていることが正しいのか」「正しいと思ってやっていたことが実は時代遅れなのではないか」「手術成績がいいのであればそれを医学会に広めるべきではないのか」「自己完結型の医療だと自分も自分以外も成長しないのではないか」「常に患者様にアップデートした医療を提供すべきではないか」「自分を育てていただいた環境にあらゆる形で恩返ししたい」などと色々考えるようになりました。かなり考え方が深まったように感じます。こういう考え方になると人生がポジティブフィードバック状態になります。眼形成で専門を突き詰めれば突き詰めるほど自分も職場の人間も患者様もみーーんなハッピーになれるなーーーと最近心から思ってます。こんな考え方に到れたのも多くの方にご指導いただいたおかげです。   「イノチノオンジンカンシャエイエンニ」 「感謝するぜ お前と出会えた これまでの 全てに」   です。(元ネタわからない人は調べてみてください。)   高齢者の眼瞼下垂について さて、本日は高齢者の眼瞼下垂についてまとめます。   当院は銀座にあるため比較的若年の患者がいらっしゃいます。正直若年の方の手術は極めてやりやすいです。 肌に張りがあって切りやすいし、萎縮や脂肪変性がなく解剖がわかりやすいし、手術結果が出しやすいです。   僕の働いている亀田総合病院では若い人はあまりこないです。実際どこの病院でも受診されるのは高齢者が多いところがほとんどだと思います。しかし高齢者では手術が困難になることが多いです。   眼球運動が全体的におぼつかず、術前の挙筋機能測定が難しい。 皮膚が薄くて張りがないためすぐにちぎれてしまう。 皮膚弛緩が強いため皮膚切除量が多くなる。 aponeurosisが萎縮し、ペラペラになっておりすぐに穴が空いてしまう。 ミュラーが脂肪変性しており、組織間の同定が難しい。 術後挙筋を短縮しすぎるとすぐにドライアイが起きる。 DM、抗血栓薬内服、腎機能障害など様々な理由で周術期管理が難しい。 緑内障点眼をしている人、レクトミー後のblebがある人、ベル現象が麻痺している人などは上げ過ぎ注意。   など困難な理由がたくさんあります。   実際自分もaponeurosisの同定が困難でモチョモチョしている内にaponeurosisをグズグズにしてしまった経験があります。 鹿嶋先生ごめんなさいです。   あとはまぶたが下がり過ぎて吊り上げか挙筋短縮のどちらがいいのか判断に迷う時が少なからずあると思います。 眉毛の位置に注目です。先天下垂で吊り上げを要する方は瞼縁〜眉毛間距離が他の方と比じゃないです。 また、「お若い頃にもほぼ今と変わらない目つきでしたか?それともパッチリ目でしたか?」と聞いてみるのも鑑別診断に有用です。若年時から下垂があったのであれば先天下垂の要素が強くあるため吊り上げ適応があると思われます。逆に若年時は比較的パッチリ目だったのであれば挙筋機能が一見低下していても挙筋短縮術をトライしてみてよいと思います。   いずれにせよ高齢者ほど術前診断、解剖の同定、切開、縫合手技を確実に丁寧に行う必要がありますのでご留意を。   さて最後に今日の手術の反省点を挙げます。 挙筋短縮術の時に眼窩脂肪がもりもりの人がいました。 僕の思考回路は「お!眼窩脂肪じゃん!今の俺なら余裕で切除できるぜ!」でした。 そして眼窩部に麻酔をかけて脂肪を切除しました…。   皆様、下垂オペの術中に眼窩部に麻酔を追加するときは必ず短縮の矯正量を確定した 後!! にしましょう。当然ですよね… でないとlevator complexに麻酔が効いてしまい、術中定量ができなくなります。 (結果だいたいの前転量で手術終了となりました…) 自分の手数が増えてきたことで欲が出ました。恥ずかしい限りです。   今後も欲を出さずに頑張ります!今日もありがとうございました!! 関連記事

2021.05.04

眼瞼下垂手術の適応・術式選択について

今日もよろしくお願いします。   最近筋トレ・減量にハマっているのでラーメンは食べておりません。すいません。 もっぱら「緑の濃い野菜」「玄米」「質のいい油」「タンパク質」「大量の水分」「食物繊維」「ヨーグルト」ばかり食べています。ジャンクなものを食べる日も設けていますが、上記の食事の方が明日に繋がります。当院は医師もスタッフも患者も美的に優れている方が多いので自分も追いつけるように頑張ります。   昨日今更ですが、「The Greatest Showman」観ました。最高ですねあの映画。 興行師である主人公が奇怪なルックスのスタッフを集めて博物館やサーカスを始めます。当時は「いかがわしい」「低俗だ」などと言われ卑下されていましたが、終盤になると家族や仲間・世間に認められていき、本当の成功・幸福を手にするというストーリーです。序盤に新聞でショーを酷評されるシーンがあるのですが、それを逆手に取り「新聞を持参した人は入場料を半額にします」と広告を出すというの皮肉な対応策が個人的に滑稽でした。人間常になんらかの逆境に晒されていると思いますが、荒波を悠々自適に乗り越えるメンタルを教わりました。まだまだ若造ですが、逆境をどこか楽しむように笑顔で乗り越えます。(診療中ニヤニヤしがちなので気をつけます。)     眼瞼下垂について さて今日は眼瞼下垂についてです。 当院では下垂手術に対してblepharoplasty、aponeurosis(一部ミュラー)による挙筋前転術、吊り上げ術(ナイロン糸、ゴアテテックス)、眉毛下皮膚切除などを施行しております。   まだまだ適応範囲についてはわかっていない部分も多いですが、まず「下垂があるのかな??」と思った時には上方視時に瞼縁の下垂があるがどうかを診るべきと教わっております。正面視のMRD-1の評価だけだと皮膚弛緩なのか、levator complexの下垂なのかがよくわからないです。   上方視した時に瞼縁が上がっており皮膚だけが弛緩している場合は、levator complexの短縮は不要でBlepharoplastyや眉毛下皮膚切除が適応になります。 上方視した時に瞼縁が下がっている、もしくは左右差がある場合は、aponeurosisによる挙筋前転術、もしくは吊り上げ術が適応になります。   Blepharoplastyと眉毛下皮膚切除の選択の仕方は、皮膚弛緩のある範囲が上眼瞼全域であればBlepharoplasty、範囲が上眼瞼の頂点より外側であれば眉毛下皮膚切除を選択します。加えて、眉毛下皮膚切除は極力重瞼がある人に勧められます。重瞼がない人はBlepharoplastyを行っておいた方が無難かと思われます。   挙筋前転術と吊り上げ術の選択の仕方は、挙筋機能が保たれていれば挙筋前転術、保たれていなければ吊り上げ術を選択しています。判断に悩んだ時はとりあえず挙筋前転術からトライしてダメだったら吊り上げをしましょう、としっかりムンテラしておけば問題ないかと思います。そのため術前の挙筋機能検査は必須を言えると思います。(最初はよく測定を忘れて注意をしていただきました。)   挙筋前転術はaponeurosisのみ前転するか、ミュラーも含めて前転するかは術中の上眼瞼の上がり具合で決めます。aponeurosisの短縮のみでどうしても上がらなければ、ミュラーと結膜を剥離してapoとミュラーの両方を短縮します。ミュラーは支配神経が違いますので剥離する前に必ずミュラーに麻酔をかけましょう。患者様に痛い思いをさせるのはお互いにとって不利益です。ミュラー剥離時は動脈弓に注意して鈍的剥離をします。結膜は硬い組織なので感触で切り分けると良いです。また、ミュラーの血管は横、結膜の血管は縦に走っているためそこでも見分けられます。結膜に穴が開いたとしても縫合は不要です。最後に5-0シルクでマットレス縫合して前転を行います。     眼形成手術は手術の美しさ・速さも大事ですが、それよりも診断が一番重要だと思います。 今日もありがとうございました。 関連記事

2021.04.28

手強い下眼瞼内反

今日もよろしくお願いします。   自分は東村アキコという漫画家が大好きです。ギャグ表現が多いのですが端々に散りばめられた表現や描写がストレスの多い現代人の心の琴線に直に触れてくるような作品ばかりです。一番有名なのは「東京タラレバ娘」でしょうか?他に「かくかくしかじか」「主に泣いています」「美食探偵 明智五郎」「ママはテンパリスト」などがあり、ほぼ全て非常によくできてます。   今は「雪花の虎」という漫画を読んでおります。上杉謙信が女性だったのではないか?という俗説があり、それを題材にした作品が過去に多く出版・放送されています。その中に「六韜三略」という兵法書が出てくるシーンがあります。そこに記されている「十過」は、将たる者にふさわしくない十の「過ち」を挙げたもののようです。現代のリーダーにも通ずるものがあると思ったので供覧します。何かの糧にしていただければ幸いです。 勇にはやって死を軽んずるもの 短気でせっかちなもの 欲が深くて利益を好むもの 仁がありすぎて厳しさに欠けるもの 智はあるけれど臆病なもの どんな相手も軽々しく信用するもの 清廉であって人にもそれを要求するもの 智がありすぎて決断できないもの 意思が強くなんでも自分で処理するもの 意思が弱くなんでも人任せにするもの       さて本日は下眼瞼内反についてです。まず下眼瞼内反と外反正直難しいです。上眼瞼の疾患よりも病態、治療法がやや理解しづらい部分が多いです。下眼瞼内反について今現時点で教わった点・考えた点についてまとめます。   まず眼瞼内反の病態ですが、なんらかの理由によって前葉と後葉のバランスが崩れることが原因です。前葉の水平方向の弛緩と後葉の垂直方向の弛緩が起こることにより眼輪筋隔膜前部の瞼板の上に乗り上げる「overriding現象」を生じ眼瞼が眼球側に内回転することにより発症します。大半は退行性が原因ですが、一部にある瘢痕性を見逃さず手術方法を選択する必要があります。   退行性・瘢痕性の場合見分ける方法としては触診が一番いいと思います。前葉に水平方向の弛緩であればSnap back test, Pinch test, Lateral distraction test, Medical distraction testなど色々なテストがあります。後葉の垂直方向の弛緩については瞬目テストが有効と言われています。   他に教科書には書いてないですが、下眼瞼をpush upするときに容易に内回転で起こればが後葉の拘縮があるということを示しています。   これらの見分け方は外反の病態判断にも使用でき、術式選択に非常に有効です。     次に術式選択ですが、これまた難しい。Jones原法、Jones変法、Wheeler-Hisatomi法、Lateral tarsal strip法、埋没法があります。   当院では主に前葉後葉ともに拘縮のない眼瞼内反にはLER plicationを施行しております。 何それ??って思った方(僕もでした…)は鹿嶋先生がyoutubeに動画をアップしていただいているので見てみてください。 おそらくまだ再発率について論文化しておりません(申し訳ありません…。近い未来論文化します。)が、簡単な手技の割にかなり再発率が低いです。お試しいただけたら幸いです。   水平方向の弛緩が強い場合にはLateral tarsal strip法を行っております。 後葉の拘縮がある場合にはLER切離+Hotzを行なっています。 いずれもまだ執刀経験がありません…まだまだハードル高いっす… 他にも色々な術式の使い分けがあるのでしょうが、まだわかっていない部分が多いので今後答えに近づけるように頑張ります。     また執刀機会がありましたら、ポイントについてまとめてご報告したいと思います。 今日もありがとうございました! 関連記事

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